2月21日、毎日新聞は1872(明治5)年の創刊から、今年で150年を迎えました。同じ年に新橋―横浜間で日本初の鉄道が開業するなど、新聞には長い歴史があります。いつからあってどんなふうに変わってきたのでしょうか。【下桐実雅子】
◇いつからあるの?
日本の新聞は、江戸時代の「かわら版」が始まりとされます。文字と絵を使った庶民の情報紙で、木版の一枚刷りでした。内容は地震や台風、火事、はやった病気、外国からやって来た黒船などで、事件が起こるごとに刷られました。1855(安政2)年に江戸(今の東京)を襲い多数の死傷者を出した大地震では数百種類が発行されたそうです。
江戸時代は貿易などを制限する鎖国が続きましたが、末期の1859年に横浜(今の神奈川県)などに港が開かれ、外国との貿易が始まります。1861年、来日したイギリス人が初の英字新聞を外国人居留地で発行しました。62年には、江戸幕府が海外の新聞を翻訳し、初めての日本語の新聞「官板バタヒヤ新聞」が発行されます。
世界では、1450年ごろから、ドイツのグーテンベルクによって活字を使った「活版印刷」の技術が実用化されました。その後、郵便制度が整ったドイツで1650年、世界で初めて日刊新聞が発行されました。
◇日本の最初の新聞は?
明治時代になると海外からさまざまな文化が取り入れられ、新政府は近代国家の建設を進めていきます。国民の政治や経済、社会への関心も高まり、新聞の創刊が相次ぎました。
1871年1月、日本で最初の日刊新聞「横浜毎日新聞」が横浜で創刊。当時の神奈川県知事だった井関盛艮が呼びかけ、横浜の商人の出資で誕生したようです。それまでの木版刷りではなく、木や鉛の活字を使って印刷し、近代新聞の歴史が開かれました。
翌72年には各地で新聞が生まれ、東京初の日刊新聞で今も残る新聞では最も古い「東京日日新聞」(今の毎日新聞)や「峡中新聞」(今の山梨日日新聞)が創刊されました。その後、漢字に読みがなが付いた「読売新聞」と「朝日新聞」が登場し、庶民の間で広まりました。このころ、新聞の連載小説も始まり、読者層を広げていきました。
◇新聞はどのぐらいあるの?
新聞社や放送局などでつくる日本新聞協会に入っている新聞社だけで99社あります(2月17日現在)。この中には、読売、朝日、毎日など全国で売られる全国紙もあれば、地方を拠点にしてその地域の人に向けた地方紙(地方新聞)、スポーツや芸能などを扱うスポーツ新聞もあります。このほか、農業、住宅、交通、薬など特定の分野を扱う専門紙もたくさんあります。
日本の全国紙は、1923(大正12)年の関東大震災で東京の新聞社の多くが火災などの被害を受けたときに、大阪を本拠地とする朝日と毎日が勢いを全国的に伸ばしたことがきっかけとなりました。
また、戦争中に政府が情報の統制を進める中で、42年に東京と大阪以外は1県に一つの新聞とする「新聞統合」が行われました。これによって全国に1208社あった日刊の新聞社は55社に統合されました。戦後、また増えましたが、各県に有力な地方紙が生まれたのは、この統合がきっかけと言われます。
◇ネットのニュースも増えているようだけど?
新聞は1960年代の高度経済成長期以降、大家族から親子だけの核家族化が進んで世帯数が増える中、発行部数を伸ばしてきました。64年には経済協力開発機構(OECD)に加盟して先進国の仲間入りをし、この年にアジアで初めて東京オリンピックが開かれました。カラー紙面も取り入れられました。一番多かったのは1997年で約5377万部でした。今は約3303万部で、97年から2000万部ぐらい減っています。
2000年以降、インターネットが急速に広がり、人々が情報を集めるのにネットを広く使うようになったことが要因の一つです。スマートフォンで新聞の電子版が読めるようになり、ネットでのニュース配信も盛んです。新聞各社も紙だけでなく、ネット部門の事業に力を入れています。
◇自由に書けなかった時代があるの?
新聞の歴史の中では、政府に都合の悪い記事や批判的な記事を書くと、政府が発行者を罰したり発行を停止したりすることがありました。大正時代の1918年に米騒動(米の値段が跳ね上がり、安売りを求めて人々が米屋に押しかけた事件)が広がったときは、当時の内閣は米騒動に関する一切の報道を禁じました。
30年代になると、日本は軍国主義への道を進みます。戦争が始まり、政府は情報を発表する窓口を一本化するなど、言論の統制を強めました。戦争の状況は大本営の陸軍部、海軍部が発表しましたが、苦戦が続くと、本当のことが発表されなくなり、国民に正しい情報が届かなくなりました。
たとえば、アメリカに大敗した「ミッドウェー海戦」で日本は主力の空母を4隻失いましたが、新聞で伝えられず、日本の攻撃が強調されました。新聞が国民の戦意をあおって戦争に協力した面があり、戦後の新聞はその反省から再出発しました。
◇新聞のあゆみ
- 1861年 日本初の英字新聞が長崎で創刊
- 1862年 オランダ政府の機関紙を翻訳した日本語新聞「官板バタヒヤ新聞」を江戸幕府の研究所が創刊
- 1871年 日本初の日刊新聞「横浜毎日新聞」が創刊
- 1872年 「東京日日新聞」などが創刊
- 1874年 読売新聞が創刊
- 1879年 朝日新聞が創刊
- 1894年 日清戦争、1904年の日露戦争で新聞各社が号外を乱発
- 1922年 目の見えない人のための点字新聞「点字毎日」が創刊
- 1936年 「大毎小学生新聞」(今の毎日小学生新聞)が創刊
- 1946年 日本初のスポーツ新聞「日刊スポーツ」が創刊
- 1964年 東京オリンピックでカラー印刷が取り入れられる
- 1985年 NIE(教育に新聞を)運動始まる
(2022年02月23日掲載毎日小学生新聞より)