スクールエコノミストは、私立中高一貫校の【最先進教育】の紹介を目的とした「12歳の学習デザインガイド」。今回は学習院女子中等科を紹介します。

文化の薫りが満ちる“森の中の学校” 広がりを見せる教科連携のIT授業
<注目ポイント>
①「答え」だけでなく「過程」も評価する記述式入。
②本物に触れ、手を動かす体験と少人数授業。
③進学先や社会で求められる数学的な力の育成。
思考の過程を重視する入試問題
学習院女子中等科の算数の入試問題は、計算問題から始まり、文章題、さらに図やグラフを用いた問題へと展開する構成となっている。その最大の特徴は、B4サイズ3枚の試験用紙に解答の全過程を記述させる点にある。同校では、考え方を表現しようとする姿勢を重視しており、採点では複数の数学科教員で答案を読み込み、受験生の思考の流れを丁寧に評価する。答えが間違っていても、方針や途中式が正しければ加点し、逆に、正しい答えが書いてあっても過程に誤りがあれば減点する。
同校が求めるのは、パターン学習に頼らず、既有の知識を組み合わせて未知の課題に対処できる生徒だ。そのため「解法を自分の言葉で説明する力」や「別の単元の考え方を応用する力」を見逃さない姿勢が、出題と採点の両面に貫かれている。数学が得意な生徒ほど、考えを整理し、見やすい答案を書く傾向があるという。言葉の使い方や説明の工夫が、理解の深さを反映しているのだ。一方で、答案は受験生の努力の結晶であることを念頭に置き、例え拙い説明であっても、汲み取って評価している。
「入学後も『書くこと』を重視します」と堀江克人教諭。こうした出題の方針は、同校が重視する「自分で考える力」「論理的思考力」「表現力」といった能力を測るだけでなく、これらを伸ばすという同校の教育理念を反映している。
生徒の発達段階に応じた体験型授業
同校の数学の授業では、生徒の発達段階に合わせ、「代数」と「幾何」を分けて授業を進める。中1の代数と中2の幾何では、20人の少人数クラス編成を採用し、一人ひとりへの丁寧な指導と発表の機会を確保している。生徒は互いの解答を読み解きながら意見を交わし、学び合いを通して理解を深めていく。
授業の核となるのは、「手を動かす」「本物に触れる」という学びの原則だ。抽象的な概念を具体的な操作を通して理解し、そこから理論へとつなげる《操作▶発見▶証明》の流れを重視する。例えば図形の授業では、実際に多面体の模型を製作して立体の性質を確かめ、確率の単元ではサイコロやコインなどを用い検証を行う。実感を伴う活動で学び、それを数学的に表現し、その正確性を吟味する訓練を繰り返す。また、「数式を言葉に表す」という方法も取り入れている。「数学が得意な生徒は数式のみで理解するが、不得意な生徒は日本語訳すると納得することが多い」と大島照子教諭。その他、小テストの添削フォローや教科書で論理の省略がある箇所はプリントで補完するなど、誰も取りこぼさないよう細やかに対応している。
授業外でも、数学的思考の実践的活用は、多様な学習機会を通して促される。夏の自由課題では、「数学について何でも調べよう」というテーマが与えられ、生徒はそれぞれの関心に基づいて取り組む。定理の由来を調べる研究から、数の性質を物語にした紙芝居の制作、算額づくり、プログラミングによる確率の検証まで、内容は実に多彩だ。こうした課題を通して、生徒たちは「自ら問いを立て、考え、表現する」経験を積み重ねていく。

少人数クラスで行われる中学2年生の幾何の授業の様子
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