領土って何だろう【月刊Newsがわかる6月号】

スクールエコノミスト2026 WEB【桐朋女子中学校編】

スクールエコノミストは、私立中高一貫校の【最先進教育】の紹介を目的とした「12歳の学習デザインガイド」。今回は桐朋女子中学校を紹介します。

放送部の映像作品は全国大会に出場し、生物班OGは海外科学誌の表紙を飾る!

<注目ポイント>
①「映画の町・調布」を5分の映像に凝縮し都1位、全国大会へ。
②動物愛にあふれた生徒が集い、飼育を通して命と向き合う生物班。
③世界42大学への推薦制度で海外進学の道を拓く。

まるでテレビ局のような放送部の活動

 中高生にとって、部活動は内に秘めた力を発揮できる大切な時間だ。桐朋女子の放送部は、まさにそんな場所である。中高合わせて14名の部員が、週4回の活動のなかで発声練習からアナウンスや朗読、そして本格的な番組制作までを手がける。

 高校生は年間2本のドキュメント番組を制作し、NHK杯全国高校放送コンテスト(通称Nコン)や高等学校総合文化祭に出品する。2025年秋、高校2年生6名のチームが制作したドキュメント動画「フィルムを紡いで」は、東京都大会で1位となり、全国大会への切符を手にした。テーマは「映画の町・調布」。かつて日活をはじめとする大手撮影所が集まり、日本映画の一大拠点として栄え、初代「ゴジラ」映画のワンシーンに桐朋女子が登場した歴史がこの町や同校にはある。番組は、モノクロの歴史映像から始まり、調布市の担当者や、大河ドラマにも小道具を提供する高津装飾美術株式会社へのインタビューを軸に構成される。映画産業が衰退していく現実のなかで、町はこの歴史をどう受け継ごうとしているのか。5分という限られた時間に、問いと視点が凝縮されている。

 部長のNさんは調布市出身。「映画の町と言われているのに、あまり知られていないのでは」という素朴な疑問が出発点だった。東京という大都市のなかにも、掘り下げると町ならではの顔が見えてくる。その気づきから生まれた「アイデンティティ」という言葉は、チームにとって制作の軸になった。

 顧問の飯田百合子教諭は「地域に根ざしたテーマを、他県の高校生に伝えようと辛抱強く編集できたのがよかった」と語る。

 放送部が大切にしているのは、ただ情報を伝えることではない。「自分はこの話題の何を大事だと思っているのか」を問い続けながら、言葉を選び、映像を選ぶ。その過程は、自分自身と向き合う時間でもある。問いを持ち、考え、表現する。その一連の営みが、ここでは日常になっている。

動物愛にあふれる、やさしい居場所

 自然科学部・生物班には、とにかく生き物が好きな生徒が集まってくる。カエル、ヤモリ、グッピー、ウズラ。クラブで飼育する生き物は多岐にわたり、部員たちはそれぞれ「推し」を持っている。

 中学生の活動は、ほぼ飼育が中心だ。飼い方はネットや本で調べ、「この餌がいいらしい」「こうすれば長生きする」と情報を集めていく。週4日の活動だが、連休明けの朝、心配で様子を見に来る生徒もいる。「教室では静かな子も、ここでは本当によく喋るんです」と顧問の荒井綾美教諭は笑う。

 高校生になると、組織培養など実験的な活動にも取り組む。クリーンベンチを使い、植物の葉から細胞を培養する技術は、先輩から後輩へ受け継がれてきた。ただし、興味は人それぞれ。培養に夢中になる生徒もいれば、飼育に専念する生徒もいる。そんな自由さが、生物班らしい空気をつくっている。

 卒業後の進路は様々だ。自然科学の道に進む生徒もいれば、社会科学の道へ進む生徒もいる。なかには、大学の研究者となり、海外の科学誌『Nature Plants』の表紙を自身の研究成果で飾った生物班OGもいる。好きなことを追いかけた先に、思いがけない未来が待っていることもあるのだ。

『Nature Plants』の表紙を飾ったOG研究者も所属した生物班の夏合宿の様子

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