Q プールの後、なぜ水着が張り付いて脱ぎにくくなるのですか?(東京都世田谷区、小5)
体にフィットする作り 水を吸って重くなる
A 水の中で体を動かすと、水による抵抗が生まれます。ふだんの洋服は水が入り込んで抵抗が大きくなるので、水泳に向いていません。そこで抵抗を少なくするため、体にぴったりフィットした水着が作られるようになりました。脱ぎにくいのは、体にフィットするようにできているうえ、水を吸収すると、そのぶん水着が重くなるためです。
洋服や水着は、細い糸のような「繊維」でできています。どんな繊維も水を吸収すると重くなり、体に張り付きます。とくに綿や絹、羊毛といった天然繊維は水を吸収しやすいです。そのため水着には、ナイロンやポリエステルといった、水を吸いにくい化学繊維が使われています。
水着の歴史を振り返ってみましょう。1936年のベルリン・オリンピック(五輪)で金メダルを獲得した水泳の前畑秀子さんの水着は、絹で作られていました。64年の東京五輪では、スポーツメーカー「ミズノ」が日本代表選手に競泳水着を提供しましたが、この時の素材はナイロン100%でした。ナイロンは摩擦に強くて丈夫です。横へ伸びやすく、縦には伸びにくいといった特徴があります。スクール水着を製造・販売する会社「フットマーク」も、78年にナイロン100%のスクール水着を発売しました。
その後、ポリウレタンにナイロンやポリエステルを混ぜたツーウエー素材が主流になります。ポリウレタンは伸縮性が高く、横にも縦にも伸びるため、より体にフィットするようになりました。フットマーク学校教育事業部の白川純也さんは「現在でもツーウエー素材が多いです」と話します。
また、ワンピース型が主流だった女子用では、「トイレへ行きにくい」「脱ぎ着がしにくい」という声に応え、2000年代に、上下に分かれたセパレーツ型が登場しました。
白川さんは「脱ぎやすくするためには、いかに早く乾くか、水を吸わないかが重要です」と話します。水をはじく「はっ水加工」の技術が進み、10年に発売された「すまいるスイム」は、吸収する水の量を通常の水着の約5分の1に減らことができました。
フットマークは、はっ水加工をしていない水着と、すまいるスイムをぬらして重さを比べました。ワンピース型の場合、はっ水加工をしていない水着は131グラムから231グラムになり、100グラム吸水しました。一方すまいるスイムは109グラムから131グラムで、吸水は22グラムにとどまりました。
布の面積が小さい方が、吸収する水の量も少なくなるので脱ぎやすくなります。ただ最近では、紫外線対策や、性別を問わず「肌を出したくない」という理由から、膝まであるタイプや、長袖でファスナーがついた上着など、布の面積が大きな水着も人気が出ています。【毎日小学生新聞編集部・篠口純子】
(毎日小学生新聞2023年10月30日掲載)

着用したまま泳げるフットマーク社製の長袖の水着「シャインガード」=東京都墨田区で2022年7月7日、中嶋真希撮影
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