大阪・関西万博まるわかりガイド【月刊ニュースがわかる7月号】

積水ハウス建設が全国3か所で展開 高校卒の「社員工」を自社訓練校で育成

 “団塊の世代”が現役を退き、若年層の人手不足が懸念される建設業界。単なる労働力不足にとどまらず、技術の伝承といった課題も顕在化しつつあります。こうした状況の中、大手住宅メーカーは高等専門学校(高専)卒業生に加え、工業高校を中心とした高校卒業生の採用を積極的に進めています。採用後、建築系の専門学校に進学し実学を学んでもらう企業がある一方、自社の教育訓練施設で家づくりの各工程についてきめ細かな研修を重ね、「社員工」を育てていく企業もあります。

 その代表的な一社、積水ハウスグループの施工部門を担う積水ハウス建設は「若年層の人材確保と育成が、これまで以上に求められる」とみて、新入社員の採用数を増やすとともに「クラフター」と呼ぶ社員工の育成強化に乗り出しています。

 具体的には、2024年3月末時点で360名のクラフターを10年後の2034年4月時点には約3倍の1000名にまで増員する計画です。その起点として5月7日には、全国3か所にある自社施設「教育訓練センター・訓練校」(西日本校=山口県山口市、中日本校=滋賀県栗東市、東日本校=茨城県古河市)で134名(協力工事店の訓練生を含む、男性123名・女性11名)の入校式を行いました。

 東日本校の会場では、濃紺の「BEAMS」のユニフォームに身を包んだ69名の訓練生を前に、積水ハウス建設ホールディングスの赤羽崇司取締役が挨拶し、「住宅建設のプロフェッショナルを目指し頑張ってください」とエールを送りました。「家を建てる職人に憧れていた」「小さい頃から職人になりたいと思っていた」などと語る訓練生はこの後、10月までの6か月間にわたって、家づくりの基本となる基礎・建方たてかた(外装・躯体くたい)・内装について実践的に習得していきます。

 訓練生の育成に当たる「トレーナー」と呼ばれる講師陣も増員する方針です。同社では少人数で訓練できるよう、2025年度は2年前に比べ約2倍の37名にまで拡充。さらに施工現場での指導力を高めるため、現場のまとめ役で指導・育成も担う「チーフクラフター」も増員、2025年度は40名増の113名を目標としています。

トレーナーの話を真剣な眼差しで聞く訓練生(積水ハウス建設提供)

 同社のクラフター育成方針で見逃せないのは、「多能工」を育てる点です。これまで一般的だった基礎・建方・内装の各工程に特化した単能工を育成するのではなく、マルチスキルを備えた多能工、言い換えれば「住宅1棟をつくることができる」技能を備えた“現代の職人”づくりを志向しているのです。ハウスメーカーの施工現場では、家づくりのさまざまな工程を高度な水準でこなせる人材が求められており、こうした現場のニーズに呼応したといえるでしょう。

 人手不足が加速する中、高卒生に目を向ける住宅各社。「職人になりたい」という強い思いをもちヤル気のある人材をどう育成するかーー。積水ハウス建設のクラフター育成策はひとつのモデルケースといえるかもしれません。