大阪・関西万博まるわかりガイド【月刊ニュースがわかる7月号】

スクールエコノミスト2025 WEB【聖徳学園中学校編】

スクールエコノミストは、私立中高一貫校の【最先進教育】の紹介を目的とした「12歳の学習デザインガイド」。今回は聖徳学園中学校を紹介します。

高校初のデータサイエンスコース誕生!国際標準の探究型学習で社会課題に挑む

<注目ポイント>

①データを活用した教育を通じて、文理融合型の学びを提供。

②国際バカロレア教育の手法を応用し、英語イマージョンで学ぶ。

③PPDACサイクルを軸にしながら、実際の社会問題解決に挑戦。

データサイエンスで新たな価値を創造

 文部科学省から教育課程特例校として認定を受け、2024年4月、高校にデータサイエンスコース(以下、DSコース)をスタートさせた聖徳学園。近年関心を集めるデータサイエンスを教育課程に組み込み、「課題設定・計画・データ収集・分析・実施」のPPDACサイクルを基本とした文理融合・探究型カリキュラムが特徴だ。国際バカロレア教育の手法も取り入れられ、一部の教科は英語イマージョン教育で行われている。

 データサイエンスは「第四の科学」として確立しつつあり、もはや現代の必須スキル。大学では急速に広がるデータサイエンス教育だが、同校のDSコースは日本の高校課程では初の開設。データサイエンティストになることでなく、データを活用した探究学習を繰り返し、データサイエンスの素養を身につけながら論理的思考力や創造性を育むことが目標だ。実際にDSコースの第1期生の場合、医学や法学、国際協力など、各々が目指す卒業後の進路は多岐にわたっている。

 カリキュラムは探究科目と一般科目から成り、探究科目には「データサイエンス探究」「グローバルシチズンシップ探究」「グローバル探究」「SDGs」「STEAM」がある。いずれもDSコースの独自科目だが、様々な教科の学習要素を組み合わせた内容だ。例えば「データサイエンス探究」は数学Ⅰと情報Ⅰの学びを融合させたもの。双方の知識とスキルを同時に獲得しながら課題解決型のプロジェクトに取り組む。ほかの4つの探究科目は前出の順に英語コミュニケーションⅠ、歴史総合、家庭基礎、美術Ⅰに総合的な探究の時間の要素を結び付け、プロジェクト型でデータを扱う授業を実施。英語のデータも扱うため、授業は英語イマージョンで進められている。データサイエンス部長のドゥラゴ英理花教諭は「探究学習と並行して教科を横断しながら学ぶことで、各教科の知識や公式が課題の解決にいかに活用できるかを理解しやすくなる。いわゆる数値だけでなく、画像や動画、音声など、データには実に様々なものがあります。それぞれの探究科目によって異なる種類のデータを用い、探究学習を通じて多様なデータの扱い方を学びます」と語る。

DS 一期生。互いに意見を交わしながら自らの学びを深める

データ分析からシステム実装まで到達

 高1の「データサイエンス探究」で取り組んだテーマは「防災」。能登半島地震にまつわるデータに触れながら、PPDACサイクルに則って課題設定から始まる。数値や画像だけでなく、VRゴーグルで映像データを視聴することもデータ収集の手段の一つ。震災による街の変化や復興のあり方をリアルに感じながら「自分ごと」として捉えていく。

 あるチームが設定した課題は「無事を知らせるローリングストック」。データにあたるうち、地震発生時、遠方に暮らす人が能登にいる自分の家族が無事に避難できたかが分からなかったケースがあったことを知り、ローリングストックの入った避難袋を持ち出したときにLINEに通知されるアイデアを考案。加えて平常時にローリングストックの賞味期限のチェックを促すリマインド機能を併せ持つシステムを開発した。