国語の授業をたのしんでいますか? 毎日小学生新聞の連載「日本語どんぶらこ」では、人呼んで「ことばハンター」こと『三省堂国語辞典』の編さん者の飯間浩明さんが身近にあって気になる日本語をとりあげています。金井真紀さんのほっこりしするイラストとともに、ことばの語源や新語や流行語など、気になることばをわかりやすく解説。ことばに関する疑問やモヤモヤがすっきりすると好評です。
この春、連載をまとめた最新刊『日本語どんぶらこ ことばは変わるよどこまでも』が発売されましたが、ことばに興味を持ったあなたも、国語に苦手意識があるあなたも、ことばの森で遊んでみませんか? ここでは既刊の『日本語をつかまえろ!』、『日本語をもっとつかまえろ』から、気になるコラムを一部ご紹介いたします。
年や時刻などを表す十二支には、12の動物の名前がついています。そこにイヌは入っているけれど、ネコは入っていないという話をしました。「ネコ年」はないのです。
でも、世界は広いものです。十二支は古代中国で生まれ、いろいろな地域に伝わりました。そのうち、ベトナムでは、十二支にウサギの代わりにネコが入っています。
一体、どういうことでしょう。ベトナム語では、ウサギは「マオ」、ネコは「メオ」と言います。とてもよく似ています。そこで、十二支を唱えるうち、いつの間にかウサギがネコになったと考えられます。
ベトナムの十二支では、このほか、ウシの代わりに水牛が、ヒツジの代わりにヤギが入っています。ベトナムの人にいっそうなじみ深い動物に変わったんですね。
日本の十二支も、実は少し変わっています。最後はイノシシですが、もとの中国ではブタでした。韓国やベトナムの十二支でもブタです。日本だけがイノシシなのです。
ブタは、人間がイノシシを改良して作ったものです。中国では昔からブタが飼われていたので、十二支に入りました。ところが、古代の日本にはブタがいなかったので、日本の十二支ではイノシシになったのです。
中国語ではブタを漢字で「猪」と書きます。でも、日本語では「猪」はイノシシのことです。これも、古代の日本にブタがいなかったことから生まれた食いちがいです。

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日本語をもっとつかまえろ!
著者:飯間 浩明 イラスト:金井 真紀 出版社:毎日新聞出版 定価:1,540円
本書の目次
第1章 日本語には仮名がある
第2章 ややこし楽しい漢字
第3章 くり返すための記号
第4章 言える形と言えない形
第5章 あなたと私の秘密
第6章 作文を書く、詩を書く
第7章 時代は変わっていく
第8章 みんなに優さしいことば
第9章 料理はことばが大事
第10章 方言でかんちがい
第11章 落語のたのしみ方
第12章 12ひきの仲間たち
第13章 色の名前もいろいろ
著者プロフィール
飯間浩明(いいま・ひろあき)
1967年、香川県生まれ。国語辞典編さん者。
『三省堂国語辞典』編集委員。国語辞典の原稿を書くために、新聞や雑誌、放送などから新しいことばを拾う毎日。街の中にも繰り出して、気になる日本語の採集を続ける。国語辞典を楽しむイベント「国語辞典ナイト」でも活躍。おもな著書に『辞書を編む』『小説の言葉尻をとらえてみた』(ともに光文社)『国語辞典のゆくえ』『つまずきやすい日本語』(ともにNHK出版)『ことばハンター』(ポプラ社)『知っておくと役立つ街の変な日本語』(朝日新聞出版)などがある。
金井真紀(かない・まき)
1974年、千葉県生まれ。文筆家、イラストレーター。「多様性をおもしろがる」を合い言葉に世界各地で人の話を拾い集めて、文や絵にしている。おもな著書に『世界はフムフムで満ちている』(ちくま文庫)『はたらく動物と』(ころから)『パリのすてきなおじさん』(柏書房)『子どもおもしろ歳時記』(理論社)『おばあちゃんは猫でテーブルを拭きながら言