Qどうして夢を見るの? 起きた時は覚えていても、すぐに忘れてしまうのはなぜ?(愛知県名古屋市、中3)
記憶を整理して生活に役立てる
A 怪物に追いかけられる夢を見て跳び起きて、同じ夢を見るのが怖くて眠れない--。そんな経験をした人もいるのではないでしょうか。夢を見る理由について、臨床心理士で東洋大学社会学部の松田英子教授に聞きました。
松田さんは、夢を見るのは「記憶を整理するため」と話します。人間の脳には日々さまざまな情報が入ってきます。寝ている時、それらの情報を今後の生活に役立てるために過去の情報と結びつけたり、優先度の高い情報とそうでないものを分けたりします。それが夢として現れるのだそうです。
ただ、空を飛べたり、魔法を使えたりと現実にはあり得ない夢を見ることもあります。松田さんによると、夢は記憶と記憶が結びついて作られるので、自分の体験でなくても、以前見た映画やアニメなどの情報が組み合わさって、夢になることもあるといいます。
時には、悪夢を見ることもあります。子どもの方が大人よりも悪夢を見ることが多いそうです。「子どもの方がストレスに対処する能力が少ないので、悪夢を見やすいのではないか」といいます。
例えば、困っていることが、悪夢として出てくることがあります。その悪夢を通して、自分が困っていることに気づいたり、夢の中で解決のための方法を試してみたりできます。松田さんは「悪夢を見ることで、逆に嫌な気分がすっきりすることもあります。悪いことが起こらないよう、自分は寝ている間に備えているんだと思えば、悪夢も悪いものではありません」と話します。
寝ている時間の20~25%は夢を見ているそうです。9時間寝ると、約2時間は夢を見ているのです。でも、2時間続けて見ているわけではありません。数回に分けて見ています。夢を見るのは、体だけが休んで脳は活発に動く「レム睡眠」の時だからです。人間はレム睡眠と、脳も休む「ノンレム睡眠」を約90分ごとに繰り返しています。ノンレム睡眠中は、基本的には夢を見ません。
楽しい夢は、覚えていたいのに、しばらくすると忘れてしまいますよね。それはレム睡眠中の脳が、記憶をとどめておくモードになっていないからです。また、寝る前に考えたり見たりしたことは夢に影響しやすいそうです。楽しいことを考えて寝れば、楽しい記憶を引き出しやすくなって、楽しい夢を見る可能性があります。覚えていられないかもしれませんが、試してみてください。
【毎日小学生新聞編集部・真田祐里】<え・内山大助>
(毎日小学生新聞2023年9月25日掲載)
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