平和の番人 国連の80年【月刊ニュースがわかる4月号】

外来生物は悪者ですか? 【疑問氷解】

Q 外来生物は悪者ですか?(大阪府豊中市、小4)

生態系に悪影響も 法律で厳しく規制

 A 外来生物とは、人間によって、もともとの生息地ではない場所に持ち込まれた生物のことです。野生化すると、そこにすんでいた生物や農作物を食べたり、人の健康に影響を与えたりなどの問題を起こします。外来生物について、大阪府立環境農林水産総合研究所(おおさか環農水研)生物多様性センターの主任研究員の山本義彦さんと幸田良介さんに教えてもらいました。

 「生態系に悪影響を与えるということは、私たちが生態系や生物多様性から得てきた恵みもなくなってしまうかもしれません。これ以上悪化させないことが大事です」と山本さんは話します。

 特に深刻な問題を起こす生き物は、法律で「特定外来生物」に指定されています。指定されると、許可なしでの輸入や飼育、栽培、移動が禁じられます。違反すると、懲役や罰金が科せられます。

 「アライグマやヌートリア、ウシガエルなどは、ペットや毛皮、食用として日本に持ち込まれた生物です。人間の管理下にある時はいいですが、そうでなくなった時、他の生物や人間にどのような影響を与えるかの予測は不可能です。何十年もたって、被害がわかったころには取り返しがつかない状況になっています」と幸田さんは指摘します。

 小学生が特定外来生物を見つけた時、どうすればいいでしょうか。山本さんは「お父さんやお母さんなど大人に相談して、市役所や公園管理者に連絡してほしい」とアドバイスします。例えば、中国や朝鮮半島などから貨物にまぎれて日本にやってきたクビアカツヤカミキリは、桜や桃などを枯らしてしまう特定外来生物です。「つかまえて持って行こうと思ってしまうかもしれませんが、生きたまま持ち運ぶと犯罪になってしまうので要注意です。桜の木を守るためにも、見つけたら、大人に知らせましょう」

 2023年6月1日から、小学生にもなじみが深いアメリカザリガニとアカミミガメが「条件付特定外来生物」に指定されます。捕まえたアメリカザリガニを自宅で飼うのはいいですが、池や川などに放したり、逃がしたりすることは禁じられます。飼い続けることができなくなった場合、無償で責任を持って飼える人に譲りましょう。

 「特定外来生物は一度広がると、対策にお金がかかります。しかし対策をしないと、人間は持続可能な生活ができなくなります」と山本さんは話します。「これ以上、外来生物による被害を増やさないためにも、『ペットを放さない』『つかまえた生物をほかの場所へ移動させない』『みなさんの地域の昔からいる生物を知ろう』を心がけましょう」と幸田さんは教えてくれました。【毎日小学生新聞編集部・長尾真希子】(毎日小学生新聞2023年5月22日掲載)

荒神谷史跡公園内で捕獲されたアメリカザリガニ=島根県出雲市で2023年6月5日、松原隼斗撮影

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