神田外語キャリアカレッジ は、神田外語大学や神田外語学院を母体とする神田外語グループの一事業体として、語学を起点にグローバル社会における課題の解決やプロジェクトを推進できる人材の育成に取り組んでいます。
今回はそんな当校の代表、仲栄司のグローバルビジネスでの体験談をお送りいたします。グローバル環境の中で仕事を進める上でのヒントや異文化についての気づきなど体験談を交えながら繰り広げられる世界には、失敗談あり、ハラハラ感あり、納得感あり。ぜひお気軽にお読みください。
インドという国は独特の匂いがあります。一言でいえばカレーの匂いとでもいいましょうか。オフィスでも街中でもカレー臭が漂っています。シンガポールに「リトルインディア」というインド人街がありますが、そこに入ると独特の匂いがします。すぐにインド人街とわかります。
さて、アジア事業部の事業部長をデリーの空港で迎えたときのこと。私は先にデリーに入っていて、事業部長がデリー入りされるのを待っていました。夜10時ごろの到着便だったでしょうか。無事に空港に到着されたのですが、お会いするや「お腹の調子が悪い」と言います。「どうされたんですか」と聞くと、「カレーに当たったらしい」と言います。どうやら機内食でカレーを食べたらしく、それが原因のようなのです。事業部長はインドエアで来られたので、日本の航空会社と違って、インド人向けのカレーだったのでしょう。しかし、それにしても機内食でお腹をこわすとは驚きました。結局、インドの薬をあてがい、事なきを得ましたが、インド恐るべし!です。
インド独特の匂いの話をもう一つ。ページャーは、ディーラーを通してエンドユーザーに販売する商売でした。ディーラーといっても大なり小なりでしたが、大半はパパママショップ的な小さなディーラーでした。ある日、北米事業を経験した海外事業グループの部長さんがインドに出張に来られました。インドのディーラーがどういうものなのか実際に訪問して見てみたいとリクエストされたので、ボンベイ(今のムンバイ)の街中にあるディーラーを何軒か一緒に訪問しました。
小さなお店がひしめくエリアで、道もアスファルト舗装されておらず、雨水が残っていました。タクシーを降りて歩き始めるや、その部長は「ちょっとこの臭気には耐えられない。仲君はよく平気でいられるな」と言います。たしかにゴミと雨水(汚水)とカレーの匂いがまざったような独特の匂いでした。私は入り組んだ路地や家が密集するうらぶれた感じのところが好きで、そういうところに行くと、アジアの混沌とした雰囲気が味わえて興味がそそられるのですが、その部長は生理的に受け付けられないとのことでした。結局、5分と持たず、すぐにタクシーに乗って引き返しました。

インドは大好きになる人と嫌いになる人と二極化するとよく言われます。インフラ系のビジネスを担当している出張者は、カレーの匂いは心地よく、インドが大好きでしょうがないと言います。彼はのちにボンベイの駐在員事務所を設けることとなり、立候補してその駐在員になりました。インド人はFriendlyな人が多く、独特の世界観があり、私にとっても魅力ある国です。匂いもそれほど気になりませんでした。
インドでの我々のビジネスパートナーのNatelco社のジェーン社長は、実務的なビジネスのブブはすべてチャンドラに任せるままで、ジェーン自身は、ビジネスチャンスがたくさんあるぞといつも前向きでした。これもNatelco社の作戦だったのでしょう。社長は大所で押さえ、NECにいい顔をし、NO.2のCOOに厳しい話をさせるという役割分担です。毎回、帰りのフライトに乗り込むまでチャンドラの価格へのディスカウント攻勢は続きました。インドの匂いはやり過ごせても、このディスカウント攻勢には毎回辟易しました。

著者情報:仲 栄司
大学でドイツ語を学び、1982年、NECに入社。退職まで一貫して海外事業に携わり、ドイツ、イタリア、フィリピン、シンガポールに駐在。訪問国数は約50カ国にのぼる。NEC退職後、 国立研究開発法人NEDOを経て、2021年4月より神田キャリアカレッジに。「共にいる時間を大切に、お互いを尊重し、みんなで新たな価値を創造していく」、神田外語キャリアカレッジをそんなチームにしたいと思っています。俳句と歴史が好きで、句集、俳句評論の著書あり。