Q 集中できる時と、できない時の違いは何?(愛知県安城市、小4)
脳の中は研究途中 「集中!」自分で作れず
A 「テレビを消して宿題に集中しなさい」と言われたり、応援するスポーツチームがピンチの場面で思わず「集中!」と叫んだり。集中は身近な言葉です。集中している時と、そうでない時の違いは誰でも経験したことがあると思います。でも、それぞれの時に脳の中では何が起きているのでしょうか。理化学研究所脳神経科学研究センターの柴田和久さんに聞きました。
柴田さんは人が行動したり考えたりする時に脳がどのように情報を処理しているのか、特に無意識や、限界を突破する時の脳のことを研究しています。脳波を測る機械を参加者につけ、さまざまな状況の中で課題に取り組んでもらう実験をしています。
柴田さんによると、集中している時、脳のある部分が必ず働いているとか、特別な脳波が出るとか、そういったことはまだわかっていないそうです。それどころか、集中とは脳のどんな状態を指すのかは、課題がよくできる時を「集中している状態」と考えるという、結果でしか表せないそうです。
一方で「集中しなさい」と言われるような、課題にうまく取り組めない時の脳の様子は少し分かっています。よく知られているのは「マイクロスリープ」という現象です。睡眠中に出る特徴的な脳波が起きている時にも出て、ごく短い時間、眠ったのと同じ状態になっているのです。マイクロスリープが脳の視覚に関わる部分で起きると、普通なら見えるものを見落としてしまうことがあります。
課題がうまくできなくなる状況もいくつか知られています。同じ課題をずっと続ける▽他に気になることがある▽課題の途中で予測できないことが起きる▽睡眠不足――などです。良い結果を出したい時は、こうした状況を避けるといいと柴田さんは言います。
柴田さんの研究では、課題がうまくできている時、生年月日を聞くなど簡単で関係のない質問で邪魔すると、課題がうまくできる状態に戻るのには一定の時間がかかることがわかっています。そして、面白いことに、自分の意思ではこの時間を短縮してすぐにうまくできる状態に戻れないそうです。
「自分で『集中』している状態に戻れないのに、親が『集中しなさい』と言うのは矛盾していますね」と柴田さんは笑います。邪魔が入ってからうまくできる状態に戻る時の脳の特徴を詳しく調べて、将来それが再現できるようになれば、早く「集中」を取り戻せるようになるかもしれないそうです。【毎日小学生新聞編集部・田嶋夏希】<え・内山大助>
(毎日小学生新聞2022年6月20日掲載)

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