高等専門学校。タイトルにある「高専」の正式名称です。ロボコンなどでその名前を聞いたことがあるかもしれません。
高専は高等学校と同じく、中学校を卒業したひとが入学することができ、入学後は5年一貫教育(商船学科は5年6カ月)。一般科目と専門科目をバランスよく配置した教育課程により、エンジニアに必要な豊かな教養と体系的な専門知識を身につけることができます。近年はこの高専のカリキュラムが海を越え「KOSEN」として東南アジアを中心に注目されています。
「高専に行こう!」では、実際に全国各地の高専の魅力や特徴などをレポートします。今回は一関高専を紹介!
創立60周年を迎える一関工業高等専門学校の挑戦
岩手県一関市に位置する一関工業高等専門学校(以下、一関高専)は、1964年に開校し、2024年に創立60周年を迎えました。本校は、岩手県南部から宮城県北部にかけて唯一の工学系高等教育機関であり、地域を支える技術者の育成に長年取り組んできました。一関高専の教育理念は「明日を拓く創造性豊かな実践的技術者の育成」です。モノづくりとコトづくりを融合させ、グローバルな視点を備えた実践的な教育が行われており、その結果として、多くの卒業生が国内外の企業や研究機関、行政機関で活躍し、高い評価を受けています。
専門性を磨き、多分野を横断する学び
一関高専では、2017年度にカリキュラムを刷新し、機械・知能、電気・電子、情報・ソフトウェア、化学・バイオの4つの専門の系(コース)を設置しました。1年次は共通教育を通じて基礎を固め、2年次から自分の興味や将来の目標に合った専門分野を「系」として選べる仕組みです。さらに4年次には、選んだ専門性を深めるだけでなく、他の分野を学ぶ機会も提供され、多方面で活躍できる技術者を育成しています。さらに2年間の専攻科(システム創造工学専攻)の課程があり、専攻科を修了すると、学士(工学)の学位を取得することが可能です。多くの卒業生が地域や首都圏の企業で活躍する一方で、東北大学などの大学院に進学し、さらに高度な知識と技術を習得する学生も増えています。
アントレプレナーシップ教育の先駆け
近年、一関高専は「起業家を育てる高専」としても注目されています。2022年には、AIを活用した「ディープラーニングコンテスト(DCON)」で最優秀賞を受賞しました。この成功を契機に、アントレプレナーシップ教育が加速しています。学生たちの「やりたい」を応援する制度や施設が充実しており、具体的には以下のような取り組みが行われています。
• コブシプロジェクトや未来創造チャレンジなど、学生が自由に挑戦できる支援制度
• ファーストペンギンファブやラボといった、学生が活動するための専用スペース
• 起業した学生が後輩を支援する「ふるさとヒーローズ」という新たなサポート体制
• 実践的な経営やマーケティング、資金調達を学べる「起業家人財育成塾」
これらの仕組みによって、多くの学生がビジネスコンテストやハッカソンに挑戦し、入賞を果たしています。現在までに5社が学生起業を果たしており、一関高専は「起業できる国立高専」として存在感を高めています。

「ふるさとヒーローズ」の取り組み風景(一関高専提供)
地域と未来をつなぐ一関高専
一関高専は、地域に根ざしつつ、世界に向けて羽ばたく技術者や起業家を育てています。60年の歴史を持ちながらも、新しい挑戦を続ける一関高専の歩みは、地域の未来を創造し、次世代の可能性を切り開く原動力となっています。興味を持たれた方は、ぜひ一関高専の活動に触れてみてください。新たな未来を一緒に創り出しましょう!

「一関高専学生起業家交流会」の風景(一関高専提供)
【一関高専へのアクセス】
■電車 JR一ノ関駅(東北新幹線・東北本線・大船渡線)
■自動車 東北自動車道 一関ICより約10分
■タクシー JR一ノ関駅より 約10 分
■バス(バス停より徒歩5分)
JR一ノ関駅より なの花バス
→8番乗り場 赤猪子行き 高梨バス停下車
JR一ノ関駅より 栗原市民バス
→4番乗り場 伊豆三丁目行き 高梨バス停下車
→2番乗り場 栗駒病院前行き 高梨バス停下車