Q 盲導犬や探知犬に向く犬、向かない犬がいるのはどうして?(神戸市、小6)
繁殖で作った種類、性質の違い生かす
A 麻布大学で犬のコミュニケーション能力について研究する久世明香さんに聞きました。
日本の盲導犬は、主にラブラドルレトリバーとゴールデンレトリバーです。この2種が持つ順応性(変化に合わせる能力の高さ)や、人と一緒に行動したがるといった性質、大きさなどが、盲導犬に必要な条件と合っているからです。
盲導犬は目の不自由な人と暮らし、店や電車の中でも一緒に行動します。店の物を食べたり、ほえたりしてはいけません。知らない場所や人混み、車などの大きな音にもパニックにならず、おおらかに応じる性質が求められます。レトリバーは元は鳥猟犬でした。人が撃ち落とした鳥を持って来るのが仕事で、勝手に鳥を狩るわけではありません。人と作業するのが好きな性格が特徴です。
一方、検疫探知犬(空港などで無断で持ち込まれる畜産物や果物を探す犬)には、嗅覚の優れたビーグルが使われます。集団でほえ立ててウサギを追い込む猟をしていたので、独立心の強さやほえやすさから、盲導犬には向きません。
盲導犬は体につけたハーネス(胴輪)で飼い主とつながりますが、チワワでは持ち手が低すぎ、高さが80センチほどあるグレートデーンでは高すぎます。レトリバーはおだやかでかわいらしい見た目で、社会になじみやすいという利点もあります。反対に、治安がよくない海外では、犯罪に巻き込まれないように、迫力ある外見で警戒心もあるシェパードが選ばれることもあるそうです。
警察犬にはシェパードやドーベルマンなどが持つ攻撃性や警戒心が合います。牧羊犬だったシェパードは、羊の誘導や見張りなどが仕事でした。動く物への反応が強く、逃げる犯人を追うのに適しています。
犬種によって外見や体格、性格などの性質に違いがあるのは、人間が要望に合う犬を繁殖させて作ってきたためです。ビーグルはウサギ狩りのため、獲物を追う嗅覚の鋭い犬として作られました。愛玩犬として、人なつっこくひざの上でおとなしくしている性質のあるキャバリアが作られました。このことがよく分かるロシアの実験があります。野生のキツネのうち、人を恐れないものを選んで繁殖させることを40世代くり返したところ、「人なつっこいキツネ」ができ、しっぽをふったり、「なでて」のアピールをしたりするようになったそうです。
犬種ごとの性質の違いに加えて、個々の犬の向き、不向きもあります。盲導犬にするためにエリートのレトリバー同士から生まれた子犬でも、盲導犬になれるのは3~4割です。生まれながらの性質に加え、幼い頃にいろいろなものに慣れておくという経験もとても重要です。「犬自体がその仕事や生活を楽しめることが大事で、その犬の向き、不向きを人間が判断するのがさらに大切」と久世さんは言います。【毎日小学生新聞編集部・田嶋夏希】(2022年10月31日掲載)

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