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なぜLEDランプは電球より使う電気が少ないのですか?【疑問氷解】

Q なぜLEDランプは電球より使う電気が少ないのですか(茨城県石岡市、小4)

「電子」の移動で直接光を取り出す

 A LED電球や蛍光灯を製造・販売するパナソニックの鈴木勝さんと池田政行さんに聞きました。60形の白熱電球は54ワットの電力を消費するのに対して、60形のLED電球は、7分の1以下の7.3ワットの電力消費で済みます。これは光の作り方の違いによるものです。

 電球は、電気を通しにくいタングステンという金属に電気を通して、およそ2000度の高温にすることで、光を放つようになります。鉄を高い温度で熱すると、赤く光るのと同じ仕組みです。この方法では、使った電力の10%以下しか光として取り出せません。

 一方LED電球は、半導体(電気をよく通すものと通さないものの中間の性質をもつ物質)に電気を流した時に、「電子」の移動で生じる反応で光を発生させます。使う電力の50%程度を光として取り出しています。

 LEDは、2種類の半導体をくっつけて作られています。一つが正孔(電子が入ることのできる穴)を多く含む「P型」の半導体、もう一つが、動ける電子を多く含む「N型」の半導体です。LEDに電流を流すと、電子が移動して正孔にぶつかり、正孔の穴に電子が入って結合します(再結合)。飛び込み台の上に立つ電子が、プールに浮かぶ正孔に向かって飛び込むイメージ=イラスト=で鈴木さんは説明しています。再結合した時に、電子が持っていた余分なエネルギーが光になります。直接光を取り出すので、熱を光に変える電球と比べて無駄がありません。

 使う電力が少ないことに加えて、長持ちするのもLEDの特徴です。LEDチップ自体には寿命がないと言われています。しかし、LED電球の寿命はおよそ4万時間と表示されています。これは、どういうことでしょうか。実はLED電球も熱を出していて、中の部品は100度近くになっています。LED電球の中の代表的な部品に、電気の流れを整える「電解コンデンサー」という部品があります。この部品の温度が高くなると、部品としての寿命が短くなってしまいます。これをアレニウスの法則といい、設計で想定している温度より10度上がると、寿命が半分になるそうです。その結果、LEDチップは使えても電気を流せなくなり、故障してしまうのです。LED電球を同じ時期に取り換えたのに、カバーのある玄関先やお風呂場の照明の方が早く使えなくなってしまうのは、熱がこもって部品が早く劣化してしまうからです。

 池田さんによると、一つの60形の白熱電球をLED電球に替えると、杉の木およそ3本が1年間に吸収するのと同じくらいの二酸化炭素を削減できるそうです。国内には現在およそ3億個の電球があると言われ、そのうちの半分はLED電球に切り替わっているそうです。【毎日小学生新聞編集部・田嶋夏希】(毎日小学生新聞2022年8月5日掲載)

約16万球のLED電球で飾られた青葉シンボルロードのイルミネーション=静岡市で2024年11月22日、丹野恒一撮影

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