推しの城 おもシロ ランキング【月刊ニュースがわかる2月号】

酸素がない宇宙で、ロケットはどうやって燃料を燃やすの?【疑問氷解】

Q 酸素がない宇宙で、ロケットはどうやって燃料を燃やし続けているのでしょうか?(奈良市、中1)

燃料とともに液体や固体で酸素積む

 A ロケットは人工衛星や惑星探査機を積んで、宇宙まで運びます。エンジンの中で燃料を燃やし、ガスを噴き出す反動で飛ぶことができます。ものが燃えるには酸素が必要ですが、宇宙には酸素がありません。そのため、エンジンに燃料と酸素を一緒に積んでいます。

 三菱重工業は宇宙航空研究開発機構(JAXA)とロケットの開発を続けています。1994年に打ち上げられた国産初の大型ロケット「H2」は、おもに液体水素と液体酸素を使った液体燃料ロケットです。極めて低い温度の液体水素と液体酸素を別々のタンクに詰めて、燃焼室というところで混ぜて燃やす仕組みです。さらに改良したのが「H2A」や、「こうのとり」を運んだ「H2B」、2021年度打ち上げ予定の「H3」です。

 三菱重工業の広報担当者は「宇宙空間では酸素がないため、水素だけでは燃え続けることができず、途中で推進力(上昇)させる力が得られなくなり、宇宙空間まで運べなくなります。そこで、燃料である水素だけでなく酸素も一緒にロケットに積んで打ち上げています。そのため、ロケットの重量の約9割は液体水素と液体酸素になります」と話します。

 ロケットの燃料には液体燃料のほかに、固体燃料もあります。固体燃料は、燃料(アルミニウム)と酸素の代わりとなる酸化剤(過塩素酸アンモニウム)などをゴムに混ぜて固めたものです。初代「はやぶさ」などを軌道に送って活躍したロケット「M5」は、固体燃料ロケットです。その後継機として開発されたのが最新ロケット「イプシロン」です。13年から19年まで、計4機の打ち上げをすべて成功させています。

 液体燃料と固体燃料には、それぞれ特徴があります。液体燃料は打ち上げ直前に詰める必要があり、天候やトラブルで延期になるといったん抜かなければなりません。液体燃料ロケットのエンジンの構造も複雑で、アメリカから技術を教えてもらって開発しました。取り扱いは難しくなりますが、ロケットの飛行方向などに関わる燃焼のコントロールがしやすくなります。

 固体燃料はポンプや配管が必要なく、詰めたままにできるので取り扱いが簡単です。その半面、点火後は燃焼のコントロールが難しいです。

 固体燃料ロケットは、1955年に打ち上げられた故糸川英夫博士によるペンシルロケット以来、日本独自に開発してきました。費用が高いため存続が危ぶまれましたが、政府は宇宙へ行く手段を複数持つことが重要と考え、開発を続けています。 【毎日小学生新聞編集部・篠口純子】(毎日小学生新聞2021年9月14日掲載)

種子島宇宙センターから打ち上げられたH3ロケット2号機=鹿児島県南種子町で2024年2月17日午前9時22分、毎日新聞社ヘリから

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