Q 車で出かけると酔ってしまいます。どうして乗り物酔いになるの?(大阪府、小1)
耳や目、体からの情報がずれて混乱
A 車やバスなどに乗った時に酔うのは、耳と目、体が感知するそれぞれの情報のバランスが崩れることが原因です。「動揺病」とも呼ばれます。
耳の中で乗り物酔いに関係する部分は、奥の方の内耳にある耳石器と三半規管です。日本医科大学多摩永山病院耳鼻咽喉科の細矢慶さんは「耳石器は髪の毛の先に石がついているようなもので、これが揺れることにより直線方向に加速する動きを感知しています。三半規管では回転運動を感じ取っています」と説明します。
耳でとらえた情報は小脳に伝わりますが、体から伝わる微妙な揺れと目で見えている景色の情報を小脳が計算して全身をコントロールしています。しかし、車に乗っている時などは、普段入ってこないような揺れなどの情報が入ってきて頭のなかが混乱してしまい、自律神経が乱れ、乗り物酔いを引き起こすのです。

大人になって自分で車を運転した場合は、自分がハンドルを切った方に車が曲がり、ブレーキを踏めば止まります。そうすると自分で次の動作が予測でき、体と目、耳でとらえたそれぞれの情報のずれが少なくなるので、酔わなくなることが多くなります。
また、大人より子どもの方が乗り物に酔いやすいとされていますが、その理由には、刺激を感知してその情報を処理する小脳が発達途中だったり、過敏だったりすることなどが挙げられます。ただし、小脳の発達が進んでいない乳幼児は、逆に乗り物に酔いにくいようです。
細矢さんは「大人より子どもが乗り物酔いをするのは、慣れの問題も大きいと思います」と言います。大人になっても、例えば船のように普段慣れていない乗り物だと酔う人がいます。その一方で、通勤の時に電車に乗ってひどく酔う人はほとんどいません。日常的に電車に乗ることで目や耳から得る情報を記憶し、情報のバランスが崩れにくくなるためです。普段よく乗る乗り物でも酔うようなら、他の病気の可能性を考えます。
ドラッグストアでは「酔い止めの薬」を取り扱っています。細矢さんは「脳の混乱を落ち着かせ、吐き気を止める成分が入っている薬が多いです」と説明します。細矢さんによると、体調の悪い時は乗り物酔いが起こりやすいので、乗車を控えた方が良いそうです。「酔うかもしれない」という不安感も自律神経を乱し、酔いにつながります。あまり不安がらず、環境と体調を整えて乗ってみると良いでしょう。【毎日小学生新聞編集部・田村彰子】(毎日小学生新聞2021年10月19日掲載)

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