推しの城 おもシロ ランキング【月刊ニュースがわかる2月号】

お肉を食べない人は、どのように栄養をつけているの?【疑問氷解】

Q お肉を食べてはいけない国の人は、どうやってお肉の栄養をつけるのですか(兵庫県相生市、小3)

必要なたんぱく質、豆と穀物から取る

 A 世界には、肉や魚といった動物を食べない人たちがいます。動物を食べない人を「ベジタリアン(菜食主義者)」といいます。多いのはインドです。宗教であるヒンズー教やジャイナ教の教えだからです。人口の4割程度がベジタリアンだとみられています。

 ベジタリアンはアメリカにもいます。キリスト教の中にも、動物を食べない教えがある宗派があります。健康のために肉を食べないベジタリアンが、アメリカやイギリスなどで増えています。卵や乳製品(牛乳やヨーグルト)も合わせて、動物のものをまったく食べない「ビーガン」の人もいます。

 文教大学健康栄養学部教授の岩井達さんは「アメリカ栄養士会は、ベジタリアンは普通の食事の人よりも肥満や生活習慣病、ある種のがんなどになりにくいと言っています」と話します。肉の脂は取りすぎると血管を傷め、病気につながります。ベジタリアンという言葉も、ベジタブル(野菜)ではなく、ラテン語のベジタス(健康)が元だそうです。

 では、肉や魚を食べなくても、栄養は十分なのでしょうか。

 肉や魚から取れる栄養で大事なのは、体を作るたんぱく質です。たんぱく質は、豆や米、小麦などの穀物にも含まれていますが、その質は肉とはちがいがあります。

 たんぱく質は20種類のアミノ酸からできています。このうち9種類のアミノ酸は人間の体で作られず、食事で取らなければなりません。肉にはこの9種類がバランスよく含まれています。そのため、良質なたんぱく質と言われます。

 一方、豆は9種類のアミノ酸のうちメチオニンが、穀物はリジンが少ないのですが、反対に豆にはリジン、穀物にはメチオニンが多いので、一緒に食べると必要なアミノ酸がそろいます。昔の日本では、肉を食べず魚も少しでしたが、豆腐や納豆、みそといった豆から作られた食べ物と米を一緒に食べていました。インドでは、豆のカレーを小麦で作ったナンや米と食べます。

 たんぱく質のほかに肉に含まれる鉄分や亜鉛、ビタミンなどの栄養は、野菜や海藻、木の実から取ることができます。

 ただし、動物のものをまったく食べない「ビーガン」の場合、一つだけ不足するおそれのある栄養があります。それはビタミンB12に含まれるコバラミンです。動物の体内で微生物が作る成分で、足りないと悪性貧血になってしまいます。人間は生まれた時に十分な量を持っていますが、ビーガンの女性が産んで母乳で育てた子どもはサプリメント(栄養補助食品)で補った方がいいそうです。【毎日小学生新聞編集部・黒崎亜弓】

(毎日小学生新聞2019年12月3日掲載)

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