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期待の新人宇宙飛行士 諏訪理さん、米田あゆさん期待の新人宇宙飛行士 諏訪理さん、米田あゆさん【ニュース知りたいんジャー】

今年、新しい2人の日本人宇宙飛行士が誕生しました。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の諏訪理さん(47)と米田あゆさん(29)です。去年2月に、約4000人の応募者から候補として選ばれ、さまざまな訓練を積んできました。そして今年10月、正式に宇宙飛行士として認定されました。アメリカや日本が参加する月探査「アルテミス計画」での活躍も期待されています。2人はどんな人)なのでしょうか。訓練の内容とともに紹介します。【野田武】


 ◇諏訪さんはどんな人?


 諏訪さんは茨城県の出身です。県立土浦第一高校、東京大学理学部地学科(今の地球惑星環境学科)を卒業しました。その後アメリカのプリンストン大学の大学院でさらに研究を続けました。青年海外協力隊や世界気象機関を経て、世界銀行でアフリカの防災対策や気候変動対策に携わりました。
 前回の宇宙飛行士の試験(2008年)でも応募し、2回目の挑戦で選ばれました。志望のきっかけは、宇宙飛行士の先輩、秋山豊寛さんや毛利衛さんの活動を、中高生の頃にテレビなどで見て憧れたことだそうです。地学を学んだ経験から、「月に水がどれくらいあるのか興味がある。月の地質調査などによって地球が生命の星になった要因を知ることができる」と語ります。
 青年海外協力隊では、アフリカ・ルワンダで教育に携さわり、先生として子どもたちを教えた経験もあるそうです。「宇宙に対する途上国の若者たちの食いつきは、すごいものがある。世界の国で、もっと宇宙開発の成果を感じられるようになっていくべきだと思います」と話しています。


 ◇米田さんは?


 米田さんは神戸女学院中学部・高等学部(兵庫県西宮市)を卒業し、東京大学医学部で学びました。その後外科医として、日本赤十字社医療センター(東京都渋谷区)と、虎の門病院(同港区)で勤務しました。
 志したのは、日本初の女性宇宙飛行士、向井千秋さんの伝記を、幼い頃に父から贈られて読んだためだそうです。皆既月食を見て「月から見た地球はどう見えるのか」と想像したといい「月に立つことができるのであれば経験を伝えたい」と語ります。
 医師としての経験を生かして、「宇宙医学」に携わることを目指しています。「たくさんの人が宇宙に行く時代がくる。宇宙で得られたことを地球へフィードバック(還元)することで、地球の医療にもつながると考えています」。また、宇宙ステーションなどで、医療の知識がある人がいるメリットもあるといいます。宇宙飛行士認定後の10月23日の記者会見で「周りの宇宙飛行士に安心感を持ってミッション(任務)に臨んでもらえるということも大事な役割だと思う」と話しました。


 ◇どんな訓練をしてきたの?


 これまでは、宇宙飛行士して必要な科学的な知識や体力、対応能力を身につける「基礎訓練」を続けてきました。
 例えば、国際宇宙ステーション(ISS)や日本実験棟「きぼう」で実際に使われる専門用語や、地上にいるJAXAのスタッフとの連絡方法などを学びました。また、宇宙での科学実験で使う装置の扱い方や、実験試料の顕微鏡観察のやり方も身につけました。さらに、国立天文台(東京都三鷹市)で天文学の講義を受けたり、月での探査も考えて、地質学の野外実習に臨んだりしました。諏訪さんは「それぞれの技術的なシステムの裏には、技術者の熱い思いがあって、人がいて、ということを知り、この世界に入らないと実感するのが難しかったのかなということを学ばせていただいた」と感想を語りました。

体力訓練を受ける宇宙飛行士候補の諏訪理さんと米田あゆさん 茨城・JAXA筑波宇宙センター


 今後はアメリカに拠点を移して、さらに訓練を重ねます。そして、宇宙へ行く具体的なミッションに選ばれるのを待ちます。


 ◇アルテミス計画って?


 アメリカが主導する、月の国際的な探査計画です。日本やヨーロッパなど40か国以上が参加しています。1969~72年に宇宙飛行士12人を月へ送ったアメリカのアポロ計画に続くものです。アルテミスは、ギリシャ神話に出てくる月の女神の名前です。順調なら2026年にも宇宙飛行士の月面着陸を目指します。月の上空には、着陸の拠点となる宇宙ステーション「ゲートウェイ」を造ります。日本とアメリカは4月、日本人飛行士2人を月面着陸させることで合意しました。なお、中国とロシアは計画には参加していません。
 他に日本は、月探査車の開発などでも貢献します。諏訪さんたちは基礎訓練中、月探査車の開発現場を見学し、月探査における役割を学びました。米田さんは「月面を走る日が待ち遠しいし、もし可能なら運転してみたいなと思います」と話しています。


 ◇あこがれの職業だよね


 宇宙飛行士にあこがれる人も少なくないと思います。10月の記者会見で2人は、そんな子どもたちへメッセージを送りました。
 米田さんは「どんなことにも勇気をもってチャレンジしてほしいなと思います。そうすると、チャレンジ一つ一つが積み重なって自分の力となって、自分の強み、そして一人一人の魅力になっていくと思う。そういった魅力が、将来の夢や目標に向かっても、きっと生きていくと思います」と語りました。
 また、諏訪さんは「これが好きだ、と思うことを大切にしてほしいなと思います。興味の対象は変わってもいいので、その時その時に夢中になれるものがあれば、きっと将来の役にたつと思うので、大切にしてほしい」と語りました。さらに、こう呼びかけました。「私もそうでしたけれど、人生の中で、何にも興味を持てないなという時期もあると思います。その時は頑張らずにいろんなことをやってみて、やっていくうちに、一生懸命やろうというものが見つかってくると思う。あせらずにそういうものを探して、見つけたら一生懸命やってみる。それが次につながるんだと信じて、やっていってほしいです」(2024年11月20日毎日小学生新聞より)