Q どうやって筋肉ができるのか教えてください。(東京都品川区、小5)
切れた筋肉を補修 「超回復」で太く
A 質問を寄せてくれた読者は、スポーツ選手の腹筋が六つに割れている動画を見て、筋肉はどうやったら増えるのか不思議に思ったそうです。
宮崎大学医学部教授で、日本臨床スポーツ医学会理事の帖佐悦男さんに、筋肉のできる仕組みについて聞きました。
筋肉は筋線維という細い線維が集まってできています。運動で負担がかかると、筋線維が部分的に切れますが、体には自ら直そうという仕組みがあります。炎症を抑えたり、筋肉を活性化したりするサイトカインというたんぱく質が、切れた部分の細胞から出て筋線維を補修します。補修する時には、元の筋肉より太く強くしようという働きがあるため、筋肉が増えたようになります。これを「超回復」と呼びます。筋肉の大きさや美しさを競うボディービルダーも筋線維の数が増えているわけではなく、線維1本が太くなっているのです。運動しすぎた時に起きる筋肉痛は、切れた筋線維が炎症を起こすための痛みだと考えられています。

筋肉を太く強くするためには、最大筋力の70~80%以上の力を使うことと、筋肉を休ませたり栄養を補給したりすることが必要です。筋肉が回復する前に負担をかけると、超回復にならずオーバートレーニングになってしまうので避けましょう。成長途中の小学生が筋トレを行う時には、体全体を使うものを選びます。同じ動作を繰り返して体の1か所に負担をかけること、ダンベルなどを使って体重以上の負担をかけることは、身長の伸びに関わる成長軟骨に負担をかけます。野球肘やオスグッド病(成長期の子どものひざが痛くなる症状)などにつながるので注意しましょう。
宇宙に長く滞在した宇宙飛行士が地球に帰ってきた時に歩きづらくなるように、筋肉は使わないと細くなってしまいます。筋肉は使うことが刺激になって、筋肉を作るように指令が出るからです。帖佐さんは、新型コロナウイルスの感染の広がりで外に出る機会が減り、小学生にも運動量が減っている人が増えていると指摘します。部屋の中でもできる適切な運動を心がけてほしいと言います。
【毎日小学生新聞編集部・田嶋夏希】
(毎日小学生新聞2021年2月16日掲載)
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