推しの城 おもシロ ランキング【月刊ニュースがわかる2月号】

投開票近づく アメリカ大統領選挙【ニュース知りたいんジャー】

11月5日のアメリカ大統領選挙の投開票まで1か月を切りました。民主党のカマラ・ハリス副大統領(59)と、共和党のドナルド・トランプ前大統領(78)が、大統領の座をめぐり熱い戦いを繰り広げています。でも、知りたいんジャーは、どうして4年に1度のこの選挙が注目されるのか不思議な様子……。大統領選のニュースがさらに面白くなるように、仕組みから豆知識まで、五つの疑問に答えます。【山根真紀】


 ◇どうして世界が注目するの?


 アメリカは経済の規模も軍事力も世界1位、人口と面積はともに世界3位という「大国」です。世界で大きな力を持つ国のトップですから、その影響力は大きく、各国は誰がトップになるのか注視しています。
 外国との関係(外交)では、ハリスさんは今の政権の方針を引き継ぐとされ、大統領になっても大きな変化はなさそうです。一方で、トランプさんが大統領になると、パレスチナ自治区ガザ地区やウクライナでの戦闘、また、中国との関係などにも変化が起こり、各国に影響が及ぶとみられています。
 ただ、「大統領がすべてを一人で決めているわけではありません」と念を押すのは、アメリカ史・アメリカ研究を専門とする津田塾大学(東京都)の大類久恵教授です。15の省を束ねる行政府のトップのため権力はあるものの、「アメリカにはみんなの意見が集約される仕組みがあり、権力の集中を防ぐための〝チェックとバランス〟は機能している」といいます。


 ◇選挙の仕組みが知りたいな


 日本の総理大臣は国会議員が選びますが、アメリカは有権者が選びます。ただし、有権者が投じた票の総数を数えるわけではありません。アメリカには、各党が選んだ「選挙人」と呼ばれる人が538人います。誰に投票するかを約束している、大統領を選ぶ権利のある人たちです。選挙人の数は、全国の50州と首都ワシントンに、人口に応じて割りふられており、11月の選挙では有権者はこの選挙人を選びます。
 投票用紙には大統領候補と副大統領候補の名前がセットで書かれていて、有権者はふさわしいと思う候補者のペアを選びます。開票の結果、一番多く票を得た候補者のペアが、その州に割りふられた選挙人すべてを獲得します(一部の州を除く)。
 そして、538の過半数、270以上の選挙人を獲得した人が、次期大統領となるのです。12月には選挙人による投票が行われ、連邦議会の上院下院合同会議が投票結果を確認して正式に新大統領が決まります。


 ◇なんで直接選ばないの?


 「今の選挙の方式は、1787年の憲法制定時から変わっていません。王様がいて、貴族が政治をしていたイギリスやヨーロッパの国々とは異なり、アメリカはあらゆる人が国づくりに関わっていました。政治の知識が十分でない人も当時は多く、みんなが同じ1票を持つと、どんなふうになるのか分からないと考えられたのでしょう」(大類さん)。そこで、知識を持つ人を選び、みんなに代わって投票する仕組みができたといいます。現代では1人が直接1票を投じてもいいはずですが、今の仕組みは広く受け入れられています。
 ただ、今の仕組みだと、全国の得票数で勝っても、選挙人の数で負けて、大統領になれない場合があります。過去5回あり、直近では2016年の選挙で民主党のヒラリー・クリントンさんがトランプさんの得票数を250万票以上、上回ったものの、敗北しました。


 ◇どっちが勝ちそう?

 7月に現職大統領のジョー・バイデンさんが選挙に出ないことを決めて、副大統領として政権を支えていたハリスさんが民主党の候補になりました。大類さんは「白人でも男性でもなく、マイノリティー(少数派)としての視点を持った人がスッと出てきたことに新しさを感じました」と話します。
 アメリカは近い将来、白人が多数派ではなくなるとされ、若い世代ではキリスト教離れも進んでいるといいます。変化するアメリカで、「有権者の約4割を占める無党派層や、若い世代はどちらに投票するのかも気になります」(同)。選挙戦は今のところ接戦で、結果は開票してみないとわかりません。どんな人たちが、どんな理由で、どちらを支持するのでしょうか。投票までの動きだけでなく、開票後のニュースにも目を向けてみると発見がありそうです。


 ◇民主党と共和党以外にないの?

 全国50州の知事は民主党か共和党ですし、連邦議会の議席もほとんどを民主党か共和党が占めています。アメリカは、この二つの政党によって政治が動いています。
 とはいえ、小さな政党もゼロではありません。「歴史をひもとくと、セオドア・ルーズベルトが1912年、共和党を離れて革新党から出馬(落選)したこともありました」(大類さん)
 歴代で在任期間が最も長いフランクリン・ルーズベルトの就任は、その約20年後。「第二次世界大戦という非常事態の中で、彼は大統領に4度選ばれました。当時は再選回数の上限が定められていませんでしたが、戦後、憲法が改正され、任期は2期8年までと定められました」(2024年10月09日毎日小学生新聞より)