2024年11月号に掲載している石丸伸二さんのインタビュー記事には、誌面では掲載しきれなかったエピソードがまだまだ盛りだくさん。そこで、プレミアム会員、デラックス会員向けに記事では未収録の部分も含めたすべての内容をお届けします(※一部、誌面と内容が重複します)。
7月の東京都知事選で、当選した小池百合子都知事の次に票を集めた石丸伸二さん(42)。広島県安芸高田市の市長時代からユーチューブなどのSNS(ネット交流サービス)では話題を集めていましたが一躍、誰もが知る時の人となりました。
8月上旬、石丸さんに会いたいという読者、武田竜之介さん(11)から編集部にはがきが届きました。裏金事件をはじめとした「政治とカネ」の問題をニュースで見聞きするうちに「政治家は信用できない」と思うようになったという武田さん。そんな時にユーチューブで石丸さんに出会いました。
「こんなマジメな大人がいるんだ」「たくさんの人に応援されるヒミツが知りたい」と、石丸さんのことをどんどん知りたくなりました。編集部が石丸さんに連絡すると「お受けします」と返事がありました。数日後、東京都内で取材ができました。

武田さんは緊張しながらもまっすぐと石丸さんの目を見て最初の質問をしました。
「どうして銀行員から政治家になろうと思ったのですか」
いつもの僕ならね、「その質問には何十回も答えています。インターネットで調べればわかるのに何で調べてこないんですか」って言います。大人の記者ならしばいてます(笑)。

一瞬、部屋がシーンとなりました。しかし、すぐに石丸さんは笑顔で続けます。
銀行員をしていた2020年、ぼくの地元、安芸高田市の市長が辞めるというニュースが流れました。次の市長になりたいと手を挙げた人は当時の副市長たった一人です。それでは選挙にならないよね。選挙がないと市民は選べません。それはよくないと思いました。それで飛んで帰って立候補したんです。
その選挙で、石丸さんは副市長を破って当選しました。
武田さんは続けます。「では広島からは遠く離れた東京の知事になろうと思ったのはなぜですか?」

市長として安芸高田のためにできなかったことがあまりにも多かった。誰だったらそうした問題を解決できるのかと考えたときに、一番大きな自治体のトップ、つまり東京都知事になればできるのではと思いました。
市長を4年間務めた石丸さんは、次の市長選には出ず、今年7月の東京都知事選に立候補しました。それまで、全国的には知られていなかったにもかかわらず、約166万票を集めました。当選はできませんでしたが、メディアの予想を裏切って2番になります。
当選を果たしたのは約292万票を得た小池百合子さん。高い知名度を誇る元参院議員の蓮舫さんは約128万票でした。
「都知事選が終わって、今は何を目指していますか?」と武田さんは続けます。
今、たくさんの人がそのことを気にしてくれています。「こいつ、次は何するんだ」って。まだ具体的な手段は決めていませんが、自分の力を使って日本社会を少しでもよい形にしたいという目的だけははっきりしています。
武田さんがすかさず質問します。「それはどういう姿ですか」
日本が抱える一番大きな問題は人口減少です。ずっと増えていたのが減りだした。これはもう止まらない。他の国も同じような状況です。人が減ってもこの国は大丈夫だ、という形に変えていかないといけない。例えば、人が減っても維持できる年金制度につくり変えていかなくてはならない、というようにね。

「ぼくたちにできることは?」
国の仕組みをつくっている人、仕組みを変えられる人をしっかり選ぶこと。
7年後には武田さんも選挙で投票できるようになる。その時に、きちんとした選択ができるように、今から社会の状況を知っておいてほしい。どんな政治家がいるのか調べ、その人に何をしてほしいか想像できるようになることが大事です。
話題は石丸さんの子ども時代に。田んぼが広がるのどかな町で育ったといいます。
実家は農家で、お米を作っていました。武田さんぐらいの年齢の頃は、自分の家の田んぼでトラクターを運転して耕していましたよ(※)。家の隣は電気屋さんで、よくお店の中で遊ばせてもらった。大人にまじって、自然環境のことや商売のことを身近に感じて育ちました。
※トラクターを私有地内で走らせる場合、運転免許は必要ありません
「生まれ育った場所で市長になって、どうでしたか?」と武田さんが尋ねます。
政治家って人から嫌われる仕事なんです。
びっくりした表情をする武田さんに向かって石丸さんは続けます。
やったことによって嫌われてしまうことがあるということです。具体的に言うと、ぼくが市長だった時、かなりの数の補助金の支給をストップしました。今まで市から補助金を受け取っていた人からは嫌われました。でも出し続けていくと市のお財布が空っぽになっちゃう。もっと市民みんなのためになることにお金を使いたいと思った。
支給をストップしたお金は公園の維持管理などに使いました。公園を使っている人は、公園がきれいに維持されていることは当たり前だと思って使うから特に喜ばれないんですけど……。誰もが使える公園をきれいに維持することは大事なことですよね。
武田さんは現在5年生。6年生になったら代表委員会の委員長に立候補しようと思っています。「聞く人が納得し、応援されるようなスピーチ力はどうしたらつきますか?」とアドバイスを求めると……。
スピーチっていうのは、自分の意見を伝えること。やっぱりまず、意見をパワーアップさせることが大事じゃない?
石丸さんはホワイトボードを引き寄せます。

武田さんにとって学校は100点中何点?
「78点」と武田さん。ひとの悪口を言う人が減らないから22点のマイナスだといいます。
なるほど。例えば、悪口ばかり言っているA君に聞いたら何点って言うだろう。どうして悪口を言うのだろう。Bさん、C君、Dさんの意見はどうだろう。「悪口をなくしたい」「(100点満点で足りない)22点をどうにかしたい」と言っても、「それってあなたの感想ですよね」って言われたら言い返せる? 自分の意見をパワーアップさせるために、いろんな人の意見を聞いてみるのはどうだろう。それをまとめていくと、学校をより良くするための意見がどんどん具体的になっていきます。これはスピーチ力の強いベースになります。
「子どもの頃の夢はなんでしたか?」
ゲームプログラマーになりたかった。ゲームのやり過ぎで目が悪くなっちゃったくらい。
その上で
なりたい自分の姿って変わっていくものです。
と続けます。
小学生のころはゲームを作る人になりたかったけれど、それは中学、高校、大学と年をへるたびに変わっていきました。そしてぼくにとってそれは自然なこと。ただ、ずっと変わらなかったことがあります。それは、自分は何をしたいのか、何をすべきなのか、真剣に考え続けること。
いま、武田さんがやりたいことはもちろん大事にしてほしい。だけどそれ以外にもこれからどんどんやりたいことが出てくると思う。途中で「やっぱりこっちがいい」と向きを変えたとしても、それまでやってきたことは絶対にムダにならない。その時の自分が一生懸命考えて、好きだと思える方を選んでいく。その結果、どこに行くのかはわからないけど、間違いだった、なんていう人生はないとぼくは思います。

石丸さんは、時にはホワイトボードに図やことばを書きながら、武田さんの質問に応じました。武田さんは、市長時代にみんなに嫌がられても市民のために何が一番大切かを考え、実行してきた話が、特に印象に残ったそうです。
「ユーチューブやテレビで少し怖いイメージがあったけれど、どんな質問にもわかりやすく、丁寧に答えてくれました。応援されるヒミツがわかった気がします」と、1時間の取材を振り返りました。
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