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どうなってる? リニア中央新幹線【ニュース知りたいんジャー】

世界最速の時速500キロメートルで走る列車「リニア中央新幹線」の開業予定が、2027年から7年以上延期されました。沿線地域での〝水枯れ〟問題や、「反対派」から「推進派」への県知事交代など、リニア計画は近ごろ話題に事欠きません。工事開始から10年、開業は早くて10年後、総工費は9兆円超というこの計画。今、どうなっているのでしょうか。【山根真紀】


 ◇どこを走る計画なの?


 東京・品川から大阪までを約1時間で結ぶ計画です。JR東海が整備を進めています。東海道新幹線の最高時速は285キロメートルで、品川―名古屋(愛知県)駅間を最短86分で走りますが、リニアはこれを最短40分に短縮します。品川―新大阪駅間に造られる駅は、駅名は決まっていませんが、神奈川県、山梨県、長野県、岐阜県、名古屋の5駅です(名古屋―新大阪駅間は未定)。日本列島の真ん中を走る「中央新幹線」として基本計画が決まったのは51年前の1973年。技術の開発が進められ、2014年に工事が始まりました。
 JR東海は自分たちで費用をまかない、27年に名古屋まで開業し、45年までに大阪まで延伸開業する予定でした。その後政府が16年に工事費のうち3兆円を国が貸すことを決めたため、大阪への延伸予定が8年早まりました。


 ◇なんで予定通りに進まないんだろう

 品川―名古屋駅間の約86%がトンネルで、中でも山梨、静岡、長野の3県にまたがる南アルプストンネル(全長25キロメートル)は、深くまでトンネルを掘る難しい工事です。このうち静岡県内の8.9キロメートルは県が反対していたため取りかかれず、計画が遅れました。県は、工事によって地下水の流れが変わるなどして、県中央部を流れる大井川の水が減ることを心配しています。大井川の水は農業や発電、上水道、工業などに使われ、地域に欠かせないからです。ただ、5月の県知事選挙で、反対していた川勝平太知事から、整備計画を進めたい鈴木康友知事に交代して、状況が変わりつつあります。
 なお、JR東海は開業を延期した3月以降、山梨県駅や長野県駅の工事期間を2031年まで延期しました。


 ◇水が枯れた地域があるんだって?

 岐阜県瑞浪市のトンネル工事現場付近で、井戸の水が減っていることが5月以降、明るみに出ました。トンネルを掘っている間に水がわき出し、14か所の井戸で水位が低下しています。JR東海は「工事の影響の可能性が高い」として工事を中断し、わき水を止めるためにトンネルの壁へ薬剤を注入するなどしました。
 これとは別に、10年以上前には、山梨県内の実験走行区間(42.8キロメートル)の沿線で、トンネル工事に伴う複数の水枯れが確認されています。


 ◇どんなしくみで走るの?


 リニア中央新幹線は、車両の「超電導磁石」と、軌道(ガイドウエー)の電磁石が引きつけ合ったり、反発し合ったりする力を使って前へ進みます。ガイドウエーの「推進コイル」に電気を流して、その流れる方向を切り替えることによってN極とS極を切り替えて、リニアの車両を引きつけたり反発させたりするのです。切り替えるスピードを上げると車両は速度を増します。
 高速になると、車両は10センチメートルほど浮き上がります。レールの上を走る通常の鉄道は加速しすぎると車輪が空回りしますが、リニアはそれがないため時速500キロメートルを実現できました。なお、車両に運転士は乗っておらず、指令室で操作します。


 ◇カッコイイけれど、本当に必要?


 東京、名古屋、大阪という日本の3大都市圏を短時間で結ぶので、開業すれば人の行き来が今よりも活発になり、経済活動が盛んになることが見込まれています。さらに、南海トラフ巨大地震が起きて東海道新幹線が使えなくなった場合への備えとしても期待されています。国は、東海から九州にかけての太平洋側(南海トラフ)で30年以内に70~80%の確率で巨大地震が起こると想定しています。災害時に輸送網を途絶えさせないためにも必要というわけです。
 一方、大きな経済効果を本当にもたらすのか疑問視したり、自然環境への影響を心配したりする声もあります。(2024年08月28日毎日小学生新聞より)