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夏の風物詩「怪談」【ニュース知りたいんジャー】

夏の風物詩といえば「怪談」です。背筋も凍る怖い話で、暑さを吹き飛ばしてみてはいかがでしょう。近年の怪談ブームの火付け役の一人でもあるタレントの稲川淳二さんに、怪談の魅力などを教えてもらったんジャー!【長尾真希子】

 ◇怪談の魅力って?


 稲川さんによると、素朴な普通の人が体験した怖くて不思議な話が怪談です。「突拍子がない『ホラー』とは違って、自分の身に起こりそうな怪談は怖い。しかも怖いだけじゃなく、どこか懐かしい、優しく温かい気持ちになるのが、怪談の魅力です」。おじいちゃん、おばあちゃんが話していた風景が現代にオーバーラップする(重なること)。神話のように地域に伝わる怪談もある。「そんな怪談に魅了される(ひきつけられる)のは、日本人の民族性ではないでしょうか」と説明します。
 怪談は、本やテレビ番組、映画、怪談師と呼ばれる怪談の語り手のユーチューブなどで、1人で楽しむことができます。しかし、ライブ感を大事にする稲川さんは「気の合う仲間が集まって、キャーキャーいいながら、怖がり、みんなで楽しむことが、怪談の一番の醍醐味です」と教えてくれました。

稲川淳二


 ◇なぜ夏の風物詩なの?


 江戸時代には、最大の娯楽は歌舞伎でした。クーラーなどがないため、当時の夏は、歌舞伎を上演する芝居小屋が暑すぎて、お客さんがあまり来なかったといいます。そこで、役者が素早く姿を変える「早変わり」や宙づりなどの派手な演出で怪談を題材にした歌舞伎を上演しました。これが人気となり、夏の「風物詩」として定着しました。風物詩は、季節を感じられる催しや出来事のことです。
 また、毎年夏にある「お盆」の存在も忘れてはいけません。お盆の時期になると、「あの世」から先祖の霊に加え、お参りしてくれる人のいない「無縁仏」や、恨みを抱いた霊も一緒に帰って来るとされます。
 江戸時代には、お化け屋敷も誕生しました。「四谷怪談」など怪談作品のシーンをからくり人形で見せたのが、いまのお化け屋敷の原形です。いまでは夏になると遊園地などの施設には、たくさんのお化け屋敷が登場します。
 ちょっと変わったお化け屋敷も人気です。新型コロナウイルス禍を経て、5年ぶりに復活した銚子電鉄(千葉県)の「お化け屋敷電車」です。8月11~15日に、1日2便運行します。銚子電鉄の人は「『動くお化け屋敷』だけに、逃げられません。真っ暗な車内で味わう恐怖体験は人気で、チケットはほぼ完売状態です」と話します。


 ◇幽霊っているの?


 平安時代に書かれた「今昔物語」や「日本霊異記」にも登場する幽霊とは、死んだ人の魂が成仏できず、この世にさまよい出て来たものといわれています。
 江戸時代の画家・円山応挙が、足のない幽霊画を初めて描きました。これがきっかけで、私たちがいま現在持つ幽霊のイメージができました。
 「怪談とは、怖いだけでなく、人間らしい魅力がある魂の話です。魂は、肉体はなくてもこの世に存在しており、それは自分の中にいるのでは」と稲川さんは話します。幽霊とは、この世に残された者の心が作り出す幻影なのかもしれません。


 ◇朝ドラで取り上げられるの?


 2025年秋からのNHK連続テレビ小説(朝ドラ)が、名著「怪談」などで知られる作家・小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の妻・小泉セツをモデルにした「ばけばけ」に決まりました。
 セツが物語を探し、夜に八雲に語り、八雲が文学的魂を吹き込みながら英語にするという作業の結果、生み出されたのが代表作の「怪談」です。今年で出版120年を迎えます。

小泉八雲


 八雲の「怪談」は、東洋と西洋、人と自然、生者と死者、現世と異界などをつなぐお話です。八雲夫妻のひ孫で、小泉八雲記念館(島根県松江市)の小泉凡館長(63)は「現代社会に生きる人々は、分断、対立、戦争、感染症などで閉塞感を感じる人が少なくありません。八雲の怪談作品は、そんな人間中心主義とは逆で、『つながりの感覚』を得られる作品だから人々を魅了するのではないでしょうか」と分析します。

小泉八雲と妻セツの写真の横で喜ぶ、ひ孫の小泉凡さん


 怪談は、自然や闇への畏怖(恐れ)の心を育み、物語を聞く喜びなどを人々にもたらすといいます。「朝ドラ効果で、八雲の怪談作品が読み直されたり、松江を訪れる観光客が大きく増加したりして、怪談ブームにつながれば」と小泉館長は期待を寄せます。


 ◇怪談の話し方を教えて

 稲川さんは小学生時代、雨が降って校庭で遊べない日は、いつも教室で怪談話を披露して、クラスの人気者だったといいます。「僕の場合、母親や祖母から聞いた怪談話のストックがたくさんありました。みなさんの場合は、本などからいくつかの話を頭に入れておいて、頭に絵や状況を描きながら話すのがオススメです」と稲川さんは提案します。
 例えば、「ヒューヒュー」といった風の音や、「カッカッカッ」といったゲタの音などの効果音を、口で表現するのも手だといいます。「音をつけると、説明しなくてもイメージが作りやすくなるので、効果的です」(2024年08月14日毎日小学生新聞より)