紛争や自然災害などのニュースとともに、「ユニセフ」という名前を聞くことがありますね。水色と白のマークに見覚えがある人もいるでしょう。毎小では、毎月第4火曜(一部地域は翌日)の日本ユニセフ協会の連載「いま、世界の子どもたちは」を通して、さまざまな環境を生きる子どもたちの姿を伝えています。あゆみやどんなことをしているのか、もっと知ってみませんか。【山根真紀】
◇世界の子どもたちのために、何をしているの?
食べる物やきれいな水があり、学校に通え、安心して眠れる。みなさんにとってのこうした「当たり前」がない子どもたちが、世界にはたくさんいます。ユニセフは、厳しい状況にいる子どもたちを、約190の国と地域で支援しています。
支援を行っている分野は▽栄養価の高い治療食などで体の状態を良くする「栄養」▽予防接種や身体測定を含む「保健」▽飲料水やトイレに関わる「水と衛生」▽どんな子でも学校に通えるようにする「教育」――です。例えば「教育」では、周りの大人に対して子どもが学校に通う大切さを説いたり、学用品を配ったりもしています。
助けが必要な子はとても多いです。このため、5歳よりも前に命を失う子どもの割合や、国民1人当たりの所得、18歳未満の子どもの数を目安に、どこから支援するのか決めています。また、日本を含む33の先進国・地域に置かれたユニセフ協会は、国際連合の機関であるユニセフ本部の公式窓口として、募金や広報の他、子どもの権利の普及活動に取り組んでいます。
◇パレスチナ自治区ガザ地区の子も支援しているの?
以前からしていますし、今も続けています。戦闘が続くガザ地区へ物資を運び込むのはとても難しい状況ですが、4月後半の2週間には、98台のトラックで治療食、粉ミルク、高栄養ビスケット、服などの緊急物資を届けました。燃料も提供し、海水を真水にする装置や、井戸水をくみ上げるポンプを動かすために使われ、160万人以上の命を救う水がつくられたそうです。
昨年11月、戦闘が激しくなって北部のシファ病院で治療や診察ができなくなり、新生児31人が南部の病院へ移されたというニュースがありました。この時、世界保健機関などと協力して、新生児を移した機関の一つはユニセフです。このように、他の国連機関などと協力して活動しています。それでもきれいな水は足りず、ほとんどの人は深刻な食料不足が続いています。学校も約9割が被害を受けました。こうした支援のため資金を集めるのも、ユニセフの大事な活動です。
◇どうして活動が始まったんだろう
第二次世界大戦が終わった1945年、戦争を防げなかった反省から国連ができました。翌年12月に開かれた国連の第1回総会で、戦争で被害を受けた子どもたちのために「国連国際児童緊急基金(United Nations International Children's Emergency Fund)」がつくられたのが起こりです。英語の名前の頭文字をとって「UNICEF(ユニセフ)」と呼ばれるようになりました。「緊急」とあるように、最初は3年間に限り、すぐに必要な活動をするのが目的でした。その後、活動は開発途上国の子どもたちにも対象が広げられ、53年に「国連児童基金(United Nations Children's Fund)」となってからも、ユニセフという呼び名は残っています。
◇日本も支援を受けていた時期があるね
1949年から、東京オリンピックが開催された64年までの15年間、支援を受けていました。第二次世界大戦後、食べものや着るものに困っていた子どもたちのために、給食用の脱脂粉乳(粉ミルク)、薬、服の原料になる原綿(わた)などが送られたのです。金額にすると、当時のお金で65億円に上ります。
脱脂粉乳を給食用としたのは、家庭に配っても売り払われて子どもの口に入らないことがあるから。脱脂粉乳は「ユニセフミルク」とも呼ばれ、ユニセフは配給とともに子どもたちの身長、体重、座高)を測るよう求めました。成長の記録をとることで、栄養が成長に必要なのだと学校関係者に知ってもらうためでした。56年からは妊娠している人や乳幼児への配給も始まり、栄養や衛生について学ぶ母親学級も開かれました。
◇「子どもの権利条約」が活動の土台なんだって。どんな条約?
どんな子どもにも人権があることを定めた国際的な条約です。人権とは、誰もが自分らしく、幸せに生きる権利のこと。1989年に国連で採択され、今年で35周年を迎えます。ユニセフは条約に多くの国が参加するよう呼びかけ、日本は94年に加わりました。今は196の国と地域が参加しています。
条約は、前文と54条の条文からできています。名前や国籍をもつ権利、意見を表す権利、休んだり遊んだりする権利、教育を受ける権利など、さまざまな権利があることを定めた内容です。暴力や戦争のほか、大人が子どもの幸せを奪って利益を得ようとする「搾取」からの保護も定め、すべての子どもたちが幸せに生き、健やかに成長する権利をうたっています。条約の中身が実現されるよう助言することは、ユニセフの役割の一つです。(2024年06月19日毎日小学生新聞より)