皆さん、目を大切にしていますか? 最近、近視の人が増えています。小学生の約3~4割は、めがねなどをかけずに測る「裸眼視力」が1.0未満です。めがねをかけている人も多いでしょう。6月10日は「こどもの目の日」でした。この機会に、近視の原因、予防法などについて学んでみましょう。どんなことに気をつければいいのでしょうか。日本眼科医会の常任理事、柏井真理子先生への取材を元にまとめました。
◇近視って何?
近視は、近くのものははっきり見えても、遠くのものがぼやけて見えてしまう状態です。
もともと目の眼球は、まん丸なサッカーボールのような形をしています。これが近視になると、眼球が前後に伸びて、ラグビーボールのような形になります。そうすると、目のピントが合わなくなり、遠くのものがぼやけて見えるようになるのです。
ただ「ものが見にくくなる」だけではありません。近視が進むと、大人になって、見える範囲が狭くなる「緑内障」や、眼球の内側にある網膜という組織がはがれる「網膜剝離」といった病気になる確率が高くなります。これらの病気は、悪くなると失明にもつながる怖いものです。「何とか見えるから大丈夫」と放っておくのは危険です。
残念ながら、一度眼球が伸びてしまうと、元には戻りません。現在、近視の進行を防ぐ目薬や、特殊なめがね、コンタクトレンズなど、さまざまな治療法の開発が進んでいます。
◇どうしてなるの?
近視の原因は、大きく二つ考えられています。一つは遺伝です。お父さんかお母さんのどちらかが近視の場合は、近視ではない場合と比べて2~3倍、両親が共に近視の場合は5倍、近視になりやすいと言われています。
しかし最近では、どのような生活をしているかといった環境的な影響の方が大きいといわれています。こちらがもう一つの原因です。
皆さん、スマートフォン(スマホ)や携帯ゲーム機などのデジタル機器を使っていませんか? 授業でタブレット端末を使う小学校も増えています。長時間にわたり、30㌢㍍以内の近い距離でものを見ることを繰り返すと、眼球が伸びるといわれています。そのため、一日中、スマホを使って近い距離で動画を見たり、ゲームをしたりしていると、近視になりやすくなります。
◇なったらどうすればいい?
目の前のノートはちゃんと読めるのに、黒板が見にくくなったり、遠くがぼやけてしまったりしたら、めがねをかけて視力を矯正する(正しくする)ことが大切です。まずは眼科へ行って検査をしてもらいましょう。
角膜という黒目の表面に直接のせて使う「コンタクトレンズ」で矯正する方法もあります。おしゃれのためや、スポーツをするために、興味がある人もいるかもしれませんね。ただ、使い方を間違えると、角膜を傷つけてしまったり、角膜感染症などの怖い病気になってしまったりすることもあります。
また、コンタクトレンズをつけられるのは1日12時間ぐらいが安全であるといわれています。長時間つけると目が酸素不足になってしまい、黒目に傷ができることもあります。手入れも大変なので、小学生の皆さんには、めがねをおすすめします。
◇予防はできるの?
近視は治せませんが、進行を予防することはできます。近くのものを見るとき、30㌢㍍未満になると近視になりやすくなります。
小学生の授業中に行われた調査では、教科書を読んでいるときは、目との間の距離は約31㌢㍍でしたが、タブレット端末では約24㌢㍍でした。大人がスマホを見るとき、スクリーン(画面)と目の間の距離は平均19・3㌢㍍だったという調査もあります。腕の短い小学生では、より距離が短いでしょう。
画面を見るときは、垂直に目から30~40㌢㍍離すことが重要です。30分画面を見たら、20秒以上遠くを見て目を休めます。動画やゲームは、テレビなどに端末をつないで見るのもいいでしょう。
また、大切なのは、屋外での活動を増やすことです。光を浴びることで「ドーパミン」という物質)が出て、眼球が伸びるのを抑えるのではないかといわれています。1日2時間以上が理想で、屋外にいると近視の進行をある程度予防できることが分かってきました。積極的に外へ出るようにしましょう。
◇こんな症状があったら相談しよう!
目はとても繊細です。症状のない病気やけがもあるので、注意が必要です。ボールが目に当たった、柱に顔をぶつけた、転んで顔面をけがしたなどの場合、「目は見えるから」「痛くないから」などと安心せず、必ず眼科へ行きましょう。
また、時々、右の目と左の目、それぞれ片目ずつでものを見てみましょう。両目では分からなくても、片目だと違和感があるかもしれません。どちらかの目だけ、物が二つに見えたり、ゆがんで見えたりするなどの違和感があれば、目の病気の可能性があります。目は「精密機器」のようで、とても壊れやすいものです。毎日の生活に気を付けて、大切な目を守っていきましょう。(2024年06月12日毎日小学生新聞より)