Q 幼虫はなんであんなきれいなチョウになるんですか?(埼玉県宮代町、小2)
幼虫の中に“もと” 内側は細胞入れ替え
A チョウの幼虫は何度か脱皮をくり返して成長を続け、サナギになります。やがて羽化して、大きな羽や脚、長い触覚を持つ成虫になります。幼虫と成虫では、ずいぶん姿が違いますよね。
サナギをじっくり見たことはありますか。よく見るとすでに羽や脚など成虫の特徴が確認できます。「幼虫の体の中には、成虫になる要素がもともと備わっています」と東京農工大学大学院の岩淵喜久男教授は話します。
幼虫の体の胸のあたりに羽のもとになるものがあり、サナギになる直前に大きくなります。サナギになる時に脱皮をして、羽が外側に出てきます。
こうして先に成虫の外側ができ、その後、内側で大幅な細胞の入れ替えが始まります。使われなくなった幼虫の筋肉や神経などの細胞を壊し、成虫の組織を作り上げます。サナギの中で幼虫の細胞はドロドロの状態になり、一部以外すべて新しい組織になります。
なぜこれほど大きく姿を変えるのでしょうか。「チョウは二つの世界を生きます」と岩淵教授は話します。幼虫は、成長するためにエサをたくさん食べる必要があります。目は明るさが分かる程度で、食料となる葉の場所をにおいで感知します。敵に見つからないように食べ続けるには、鳥のフンに似た姿や葉と同じ緑色の姿が適しているのです。
一方、成虫は子孫を残すことが目的なので、相手や卵を産む場所を見つけるために広い範囲を飛べる羽が必要になります。目はオスとメスを見分けるために発達し、複眼となります。大きな触覚は、においや周囲の環境を知るためです。同じ生き物でありながら違う環境を生きるには、大幅に体を入れ替えるサナギの時期が必要となるのでしょう。【毎日小学生新聞編集部】
(「疑問氷解 Vol.9(毎日小学生新聞)」より)