【ニュースがわかる2024年8月号】巻頭特集はテーマから探す! ミラクル自由研究

HA!HA!HA! 喜劇発祥120年【ニュース知りたいんジャー】

演劇の一つで、面白い筋書きやユニークな演技で観客を楽しませる「喜劇」。今年は「喜劇発祥120年」の節目の年です。喜劇が生まれた発祥の地である大阪には今、松竹新喜劇と吉本新喜劇という2大喜劇団があります。演劇ジャーナリストの畑律江さんに、喜劇の歴史などについて教えてもらいました。【長尾真希子】


 ◇そもそも喜劇って?


 人を笑わせることを目的とした演劇のことです。明治時代に西洋の近代演劇が日本に入ってきましたが、「喜劇」という言葉が誕生したのは、明治中期以降だといいます。
 1892年、小説家の尾崎紅葉が、フランスのモリエールという人の喜劇「守銭奴」を日本の物語に置き換えた作品「夏小袖」を発表しました。この時、評論家の坪内逍遥が、英語の「コメディー」の訳語として「喜劇」を用い、高く評価しました。
 畑さんは「モリエールの作品は、やがて舞台で盛んに上演されるようになり、『喜劇』という言葉も一般に定着していったようです」と解説します。


 ◇大阪でどうやって生まれ、育った?


 上方(京都・大阪地方の古い呼び方)の歌舞伎役者、曽我廼家五郎さんと十郎さんが「笑う芝居」を志し、1904年に大阪・道頓堀で旗揚げした「曽我廼家兄弟劇」が日本最初の喜劇団とされています。

曽我廼家十郎 曽我廼家喜劇 [演劇]

曽我廼家五郎 曽我廼家喜劇 [演劇]


 歌舞伎のパロディーや創作劇が人気となり、その影響で、喜劇団が全国で次々と生まれました。十郎さんが25年に死去すると、28年には、もとは十郎さんの弟子だった曽我廼家十吾さんと、二代目渋谷天外さんによる「松竹家庭劇」が発足。五郎さんが48年に亡くなった後、五郎さんの一座にいた俳優たちと、松竹家庭劇、松竹家庭劇を離れていた天外さんらの劇団すいと・ほーむが合流してできたのが「松竹新喜劇」です。喜劇王と呼ばれた藤山寛美さんらスターを生み、昨年75周年を迎えました。

藤山寛美 俳優


 「この節目に、それまで劇団を率いた三代目渋谷天外さんが代表を勇退。藤山寛美さんの孫で演技の幅を広げている藤山扇治郎さん、天外さんの養子となった渋谷天笑さん、そして2021年に『曽我廼家』の名を継いだ曽我廼家一蝶さん、曽我廼家いろはさん、曽我廼家桃太郎さん――の若手5人が軸になる新体制がスタートしました。松竹新喜劇の源流である曽我廼家兄弟劇ゆかりの名を持つ俳優が増えたのは、意義あることですね」(畑さん)


 ◇発祥の碑があるってホント?

 大阪市中央区の繁華街・道頓堀の一角にある大阪松竹座の前にあります。碑には、「曽我廼家喜劇発祥之地 曽我廼家五郎 曽我廼家十郎」と書かれています。
 碑は、1975年に藤山寛美さんが建立しました。松竹によると、もともとは、同じ道頓堀で、松竹新喜劇が拠点としていた劇場「中座」の前に建てられました。その後、99年に中座が閉館してから、いまの場所へ移動させたそうです。


 ◇松竹新喜劇と吉本新喜劇の違いは?


 大阪を代表する新喜劇が「松竹新喜劇」と「吉本新喜劇」です。
 松竹新喜劇は物語性が重視され、人情の細かな変化(機微といいます)によって笑わせて泣かせる芝居が特徴です。名作として知られる「桂春団治」や、「はなの六兵衛」「人生双六」など歴代の役者たちが書き上げた多彩な脚本が、財産となっています。
 一方、1959年に「吉本ヴァラエティ」としてスタートした吉本新喜劇は、お決まりのギャグで知られる「お笑い重視」の舞台です。今年65周年を迎えました。テレビ放送もされ、子どもたちにも人気です。

吉本新喜劇 吉田裕、アキ、間寛平、すっちー、酒井藍


 畑さんは「松竹新喜劇は脚本を練り上げて演技を積み上げていく点で『演劇』の要素が強いと言えます。一方、吉本新喜劇は瞬発的な笑いのセンスを必要とする点で『演芸』の要素が強いと言えるでしょう」と分析します。


 ◇記念の公演もあるの?見どころは?


 「松竹新喜劇 喜劇発祥120年」が5月10~19日、大阪松竹座で開かれます。
 松竹新喜劇には、髙田次郎さんという92歳の最高齢劇団員がいる一方で、7日に16歳になったばかりの期待の新星・山川大遥さんが今春、新たに加入しました。

「曽我廼家喜劇発祥之地」と書かれた碑の前で抱負を語る松竹新喜劇の山川大遥さん


 山川さんは3歳の時に「テレビの中に入る人になりたい」と芸能事務所に入り、5歳の時に初めて舞台に立ちました。小学5年の時に子役として松竹新喜劇の舞台に出演したことがあるといいます。「笑ったり、泣いたり、客席からの生の反応がうれしくて」劇団員になることを決めたそうです。
 山川さんは「120年も続いていると、喜劇が古くさくて難しいものと思うかもしれませんが、偏見を持たずに気軽に舞台を見にきてほしい」と小学生に呼びかけます。目指すのは、人の心を動かす喜劇役者です。「喜劇の魅力は、どの世代にも、笑って泣ける感動を与えられるところ。涙と笑いを後世につなげたい」と意気込んでいます。(2024年05月08日毎日小学生新聞より)