Q どうして万年筆は書けるの?(東京都府中市・小6)
「毛細管現象」と空気の通り道を利用
A 万年筆は、ペン軸の中のインクがペン先に伝わって文字を書くことができます。でもインクが出すぎたり途切れたりすることなく、必要な分だけ一定量出るのはなぜでしょうか。筆記用具メーカー、パイロットコーポレーション営業企画部の田中万理さんに教えてもらいました。
今の万年筆に近いものができたのは1809年のイギリス。しかしこのペンは、インクが出過ぎることがありました。アメリカで保険のセールスマンをしていたウォーターマンさんは、お客さんに保険の契約書にサインしてもらうときにこのペンを使ったところ、インクが出過ぎて書類を汚し、せっかく取った契約を失ってしまいました。そこで研究を重ね、1884年に万年筆を発明しました。
万年筆は、細い管に水分が吸い込まれる「毛細管現象」を利用しています。ペン先が紙に触れると、インクが細い溝(毛細管)を通ってペン先に届き、さらに紙の繊維のすきま(これも毛細管)ににじみ出て線が書けます。
途切れることなくインクをペン先から出すためには、流れ出たインクの分だけペン軸の中に空気を送りこまなければなりません。しょうゆ差しの空気穴をふさぐと、しょうゆが出てこないのと同じ理由です。このため万年筆には空気が通る溝もあって、インクが出た分だけ中に空気を入れることで、スムーズにインクが出るようになっています。
鉛筆やボールペンは、先端を紙におしつけることで字を書きますが、万年筆は毛細管現象で自然にインクが紙に付きます。田中さんによると、「力がいらないので疲れにくく、作家のなかには、『万年筆がないと書けない』という人もいるそうです」。また、「筆のようにペン先がしなるので、とめ、はね、はらいが表現でき、字がきれいに見えますよ」とのこと。
最近は子ども向けの万年筆もあるので、みなさんも使ってみてはどうでしょうか。【毎日小学生新聞編集部】
(「疑問氷解 Vol.11(毎日小学生新聞)」より)