【ニュースがわかる2024年11月号】巻頭特集は世界が注目! アメリカ大統領選

大相撲の力士の手形っていったい何なの?【大相撲中継キッズ】

国技と言われ、日本の伝統文化でもある相撲。1500年以上前から続く相撲の魅力や素朴な疑問を、「大相撲中継」の編集長である北出幸一さんが答えてくれる「教えて編集長!」。今回のキーワードは「手形」です。

 力士が押している手形っていったい何なの?

 力士が朱肉や黒いスタンプ台に手のひらを押しつけて、色紙に押すことだよ。その力士の四股名が筆書きで添えられるんだ。十両以上の関取になったら初めて手形を押すことができるんだ。

 手形は何のために押しているの?

 関取を応援する後援会の関係者などに配るために押されることが多いよ。新十両や新入幕の昇進パーティーの引き出物に手形が入れられることがよくあるんだ。商売繁盛、厄除けの縁起物として手形を額に入れて飾る人もいるよ。江戸時代の雷電為右衛門の手形が残っているから、江戸時代から手形を押す風習があったんだね。

 大関、横綱になると手形は違うの?

 大関は大関の印を押せるんだ。名古屋場所後に大関に昇進した豊昇竜は大関と豊昇竜智勝の2つの印を色紙に押しているよ。

 そして横綱になると、横綱の別名「日下開山」の印と「〇〇代横綱」「名前」の3つの印を押せるんだ。人気絶頂だった「若貴兄弟」若乃花、貴乃花の横綱も3つの印を使っていたんだ。

 幕下以下の力士たちは手形を押せないのかな?

 そうだよ。手形は関取の特権なんだ。以前十両復帰を決めた朝乃山にインタビューしたときも番付発表前だったので、手形は押せずに色紙にサインしてもらったことがあるんだ。今は三役復帰も間近で、堂々と手形を押せるようになったよ。

【大相撲裏話】心優しき小錦

 手形といえば、忘れがたい元大関小結のエピソードを思い出す。

 小錦は還暦を過ぎた今もタレントとして活躍している。現役時代の小錦が手形を押していた話ではない。我々に心遣いを見せてくれた小錦が、今も心に残っているのだ。

 確か昭和62年の初場所後のことだったと思う。当時のNHKのスポーツキャスターだった女性と小錦の取材に浅草橋にあった高砂部屋を訪ねたときのことだ。稽古が終わって、女性キャスターが小錦にインタビューすることになった。

 すると稽古場の上り座敷で小錦の兄弟子大関朝潮が、大きな音を立てて手形を押しだしたのだ。スタッフ一同困ったなと思いながらも、ここで聞くしかないとあきらめかけたときに、小錦が「音がうるさいでしょう。外でいいですよ」と言ってくれた。本当にうれしかった。2月の寒い中で小錦は泥着(どろぎ)を1枚羽織っただけで話をしてくれた。

 当時小錦は関脇に定着して2桁の勝星を挙げていた。いよいよ大関とりに臨む場所前だった。小錦はその後大関に昇進したが、横綱を張ることはなかった。心優しき小錦、いつまでも元気で活躍してほしいと思う。