推しの城 おもシロ ランキング【月刊ニュースがわかる2月号】

大相撲の決まり手っていったい何なの?【大相撲中継キッズ】

国技と言われ、日本の伝統文化でもある相撲。1500年以上前から続く相撲の魅力や素朴な疑問を、「大相撲中継」の編集長である北出幸一さんが答えてくれる「教えて編集長!」。今回のキーワードは「決まり手」です。

大相撲の決まり手っていったい何なの?

 相撲の事典では「仕掛けた力士によって勝負が決まったときの技」を決まり手としているんだ。日本相撲協会の勝負の規則では「足の裏以外の体の一部が土俵の砂につく」とか「土俵の外の砂に体の一部がつく」と勝負が決まるから、<相手の体を砂につけた技>が決まり手ということだね。

 基本の技は突き出し、突き倒し、押し出し、押し倒し、寄り切り、寄り倒し、浴びせ倒しの7つで、上手投げ、下手投げなどの投げ技が13、内掛け、外掛けなどの掛け技が18、突き落とし、とったり、肩透かしなどのひねり技が19――などに区別されているんだよ。

決まり手は全部でいくつあるの?

 今は82だよ。平成13年に相撲協会が決めたんだ。それ以前にさかのぼると、昭和35年は70、昭和30年には68だったんだ。もっと昔、江戸時代は48だった。

 決まり手以外に5つの勝負結果というものがあるよ。相手の技ではなく自分から土俵の外に出たり、膝や手をついてしまったりして勝負が決まることで、勇み足、腰砕け、つき手、つき膝、踏み出しの5つだよ。

 攻め込みながら足が出てしまって勇み足で負けて悔しがる力士を、みんなも見たことがあるかもしれないね。

いちばん多い決まり手は何なの?

 相撲協会がまとめた過去5年間の決まり手ランキングを見ると、1位が寄り切り、2位が押し出し、3位が叩き込み、4位が突き落とし、5位が寄り倒しとなっているんだ。寄り切りと押し出しで全体の50パーセントを占めているんだ。

これまでに出ていない決まり手はあるの?

 十両以上の関取の取組だと、3つだけあるんだ。すべて反り技で、掛け反り、しゅもく反り、外たすき反りの3つだよ。いつ、誰が、この技を見せてくれるのかと想像するのも楽しいね。

【大相撲裏話】つき手、かばい手

 名大関と言われた貴ノ花の土俵上の粘りをきっかけに「つき手か、かばい手か」という論争が巻き起こったことがあった。

 「つき手」は5つある勝負結果のひとつ。相手の力が加わっていないのにバランスを崩して手をつくこと。対して「かばい手」は相手の上になって倒れるときに、ケガを避けようと相手をかばう形で手をつくことである。

 昭和47年の初場所8日目、関脇貴ノ花は横綱北の富士と対戦した。貴ノ花は北の富士に足を掛けられて、あおむけに倒れそうになったところを弓なりになってこらえた。逆転のうっちゃりを狙ったが、北の富士にそのまま倒された。北の富士がケガを案じて先に土俵に右手をつき、立行司木村庄之助は貴ノ花に軍配を上げた。

 物言いがついて異例の長い協議の末に北の富士の右手はかばい手と判断されて、行司指し違いとなった。城内には判定に納得しないファンのどよめきが響き渡り、相撲協会の事務所には抗議の電話が殺到した。

 千秋楽までの謹慎処分となった庄之助は辞表を提出した。相撲ファンは庄之助に同情的で「つき手か、かばい手か」の論争では、今でも庄之助の裁きを支持する声は多い。

 こうした論争が起こったのは、NHKの名解説者だった玉ノ海梅吉が「貴ノ花の足腰にはもうひとつの生命がある」と言った名文句どおり、貴ノ花の驚異的な粘り腰があったからである。