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【ニュースがわかる2024年5月号】巻頭特集は10代のための地政学入門

南海トラフ地震を知る【ニュース知りたいんジャー】

近い将来、日本の太平洋側で「南海トラフ地震」という、とても大きな地震が起きるといわれています。発生すれば、関東から九州にかけての広い範囲で、強い揺れや大きな津波があると心配されます。今から約80年前の12月にも発生しました。いったいどんな地震なのでしょうか。【野田武】


 ◇南海トラフって何?


 静岡県沖の海底から、三重県や和歌山県などがある紀伊半島、四国、九州南部の沖の海底にかけて続く、谷のような地形をした溝です。もっとも深いところでは、水深が約4900㍍(4・9㌔㍍)あります。トラフとは、細長い海底の溝のことで、水深が6000㍍よりも浅い場合を指します。6000㍍より深いものは海溝と呼ばれます。
 地球全体に目を移すと、地球の表面は、十数枚の「プレート」という岩板によって覆われる構造をしています。プレートの厚さは約100㌔㍍で、これらは少しずつ動いています。プレートとプレートが接している境界では、片方のプレートが、もう片方の下へ沈み込んでいる場所があり、海底には深い谷がつくられます。南海トラフはそうした場所の一つです。


 ◇どんな仕組みで起きるの?


 南海トラフのプレート境界では、海側のプレートが、日本列島が載っている陸側のプレートの下に沈み込んでいます。沈み込む速さは1年間に5㌢㍍ほどで、陸側のプレートは少しずつ引きずりこまれています。引きずり込まれる陸側のプレートにはだんだん力が加わってきて、やがてその力に耐えられなくなります。すると、プレートがはね上がるようにして地震が起きるのです。
 地震が起きた後も、海側のプレートは陸側のプレートの下へと沈み込み続けています。すると陸側のプレートには、また力が加わり始め、それに耐えられなくなると、また地震が起きます。このようにして、プレート境界では地震が何度も繰り返し発生しています。


 ◇過去にはいつあった?


 もっとも近年のものは、第二次世界大戦が終わる前後で、2回発生しました。
 まず、1944(昭和19)年12月7日、三重県沖で起きました。震源が南海トラフ全体の東寄りなので「昭和東南海地震」と呼ばれています。地震の規模を示すマグニチュード(M)は7・9でした。そして2年後の46(昭和21)年12月21日、今度は四国沖でM8・0の昭和南海地震がありました。
 その前の発生は、江戸時代の1854年です。歴史を記録した書類などから、30時間の間を空けて、推定M8・4の地震が2回起きたとみられます。これより前の歴史記録も含めて調べた結果、100~150年間隔で発生していると考えられています。
 なお、一般的に、Mが7以上の地震を「大地震」といいます。中でもMが8程度以上のものは「巨大地震」と呼んで区別しています。M8の地震は、地震のエネルギーがM7の32倍になり、規模がずいぶん違うためです。


 ◇どんな被害が?

 日本各地でどれくらいの揺れになるかは、国が被害想定(被害を予測したもの)を出しています。それによると、静岡県から宮崎県にかけての太平洋側で、震度6強や震度6弱の強い揺れになるということです。震度6強の揺れでは、家の中で壁に固定していない家具の多くが動き、倒れてしまいます。耐震性の低い木造の建物は、傾いたり倒れたりします。震度6弱でも、家具が倒れたり窓ガラスが割れたりする被害が出るといわれています。
 揺れとともに津波が生じます。津波は、地震で海底が大きく動いて、その動きが海水に伝わることによって起きる現象です。普通の海の波とは全く違うもので、海岸に達すると陸地へ入り込み、建物や橋などを壊してしまいます。
 高知市などがある四国の高知平野は、1946年の昭和南海地震による津波で水につかりました。国の南海トラフ地震の被害想定によると、四国など太平洋側で高い津波がやってきます。こうした地域では、住民が地震後に津波が来るまでの間に逃げこむための「津波避難タワー」などが造られています。


 ◇備えられることを教えて


 地震の発生を防ぐことはできませんが、私たちが備えることで、地震による被害は減らすことができます。ここでは、家庭でできる対策を二つ紹介します。
 まず、夜に寝るのは、できるだけたんすやクローゼットなどの大きな家具が置かれていない部屋にすることをおすすめします。地震でこれらの家具が倒れてきて、その下敷きになるとけがをしてしまいますが、寝ていると下敷きにならないよう逃げるのが難しいからです。家が狭いなどの理由で寝室に大きな家具を置く場合は、倒れないように、金具などを使って壁に固定しましょう。
 また、大きな地震の後は多くの場合、水道やガス、電気が止まってしまいます。商店も被害を受けるので、買い物に行くのも難しいでしょう。ですので、食べ物や飲み水をあらかじめ保存しておくのが大事です。普段から少し多めに食材を買っておき、使った分を新しく買い足す「ローリングストック」という方法が有効です。(2023年12月13日毎日小学生新聞より)