【ニュースがわかる2025年1月号】楽しくあけよう パッケージ

テレビ放送が始まって70年【ニュース知りたいんジャー】

日本でテレビ放送が始まってから今年で70年です。1953年2月のNHKに続き、同年8月に日本テレビが民間初のテレビ放送を開始しました。テレビは技術の進歩とともに、日本の社会現象や流行を映し出す鏡でした。今回は、テレビの歴史をひもといていくんジャー!【長尾真希子】


 ◇テレビ放送の歴史って


 1953年2月1日に日本初のテレビ放送がNHKで始まりました。当時は白黒で放送されていました。一部のニュースや映画のほかは、ドラマやCMなどほぼすべてが生放送でした。
 当時、テレビの値段は高く、駅前や観光名所などに置かれた「街頭テレビ」の前に大勢の人が集まって、プロレスなどのスポーツ中継を楽しんだといいます。テレビが一気に家庭に広まったきっかけは、59年に行われた皇太子さま(今の上皇さま)のご結婚パレードの放送です。白黒テレビ、洗濯機、冷蔵庫が、神話の宝物をもじって「三種の神器」と呼ばれ、庶民のあこがれの象徴となりました。
 60年にカラー放送が始まり、62年にはテレビの受信契約数が1000万件を突破。64年の東京オリンピック(五輪)は五輪史上初めてカラー放送されました。2003年に「地上デジタル放送」、06年には携帯電話でテレビが見られる「ワンセグ放送」が始まり、インターネットが広まった近年は放送と同時にネットで見られるサービスなども加わって、テレビを見る方法が増えています。


 ◇最初のテレビは?


 日本で初めてテレビを量産したのは、シャープ(大阪府堺市、当時は早川電機工業)です。
 1926年に浜松高等工業学校(今の静岡大学)の高柳健次郎さんが「イ」と書かれた画像を電気信号に変えて送信し、離れた場所のブラウン管に映し出すことに、世界で初めて成功しました。当時、ラジオを作っていたシャープ創業者の早川徳次さんは、「テレビの時代が来る」と確信。31年にテレビの開発を始めました。20年かかって試作機を完成させ、翌52年に量産に成功しました。
 特に大変だったのが「偏向コイル」という重要な部品の製造で、図書館の資料などをヒントに手探りで技術開発をしたといいます。発売当時の値段は、14型サイズが17万5000円、17型サイズが19万7000円。高校卒の国家公務員の初任給が5400円で、その30か月(2年半)分以上という非常に高価なものでした。


 ◇どう進歩したの?


 「テレビはオリンピックとともに『進化』してきました」と話すのは、パナソニックミュージアム(大阪府門真市)の学芸員、川原陽子さんです。「『よりきれいな映像で見たい』というユーザー(使う人)のニーズ(要望)に合わせて、メーカー各社がオリンピック前のタイミングに新商品を開発。技術を競い、産業の発展につながったのです」
 2003年に地上デジタル放送が始まると、それまでのブラウン管から、液晶の薄型大型テレビが主流になりました。さらに衛星放送で高画質の4K、8K放送が開始されると、有機ELテレビなどが誕生。映像はさらに細かく美しく、テレビは軽量で薄く、同時に省エネ化が進みました。「平成時代の30年間に大型テレビの(画面の)厚さは約50㌢㍍から約5㍉㍍に、つまり100分の1に薄くなったと言われています」


 ◇リモコンはいつから?


 小学生のみなさんには想像がつかないかもしれませんが、1980年代ごろまでは、テレビについているつまみを「ガチャガチャ」と回してチャンネルを変えていました。
 今と同じ、目に見えない赤外線という光を使ったリモコンで操作できるテレビは、72年に松下電器(今のパナソニックグループ)が世界で初めて開発しました。といっても、リモコンを押すと、テレビの中のモーターが動いて「ガチャガチャ」とつまみが回ったのだそうです。超音波を使うリモコンはありましたが、電話のベルなど身の回りの高い音で誤作動してしまうことがよくあったといいます。「赤外線技術の誕生で、エアコンやオーディオなど、さまざまな製品でリモコンが使われるようになりました」と、川原さんは教えてくれました。


 ◇「あこがれの的」って?

 「テレビが時代の最先端だった1950年代には、『気分だけでも味わおう』と、テレビの形をしたユニークな商品が多数発売されていました」と教えてくれたのは、昭和レトロ家電コレクターの増田健一さん(大阪府)です。
 増田さんのお気に入りは、56年に早川電機工業が発売したテレビ型ラジオ。「価格は1万900円。白黒テレビが8万円の時代だったので、まあまあ高かったですね」と笑います。松下電器も4本の脚がついた「テレビ型ガスストーブ」を2万3500円で発売。森永製菓は「テレビタイム」という名前のテレビ鑑賞用のおやつを発売しました。家族そろってのテレビが、いかに楽しい時間だったかを想像できます。
 最も珍品なのが「ワイドカラースコープ」。「カラー放送が始まった1960年ごろ、カラーテレビは50万円もして、一般家庭は買うことができませんでした。ならば、と登場したのが、白黒テレビの前に置くだけでカラーに見える……かもしれない、という商品です。映像も拡大して見えるんですよ」(2023年03月29日毎日小学生新聞より)