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【ニュースがわかる2024年5月号】巻頭特集は10代のための地政学入門

「梅干し」「梅酒」… 日本人になじみの梅とは?【ニュース知りたいんジャー】

和歌山県など梅の産地で、5月から梅の実の収穫が始まりました。梅は春に花を咲かせ、6~7月の梅雨のころに実が熟します。梅の実は、梅干しや梅酒、梅シロップなどに使われます。古くから日本人に親しまれてきた梅について調べてみました。【篠口純子】

◇昔から日本にあるの?

 梅は中国原産と言われています。日本にいつ伝わってきたのか分かっていませんが、縄文時代の遺跡から梅の種が見つかっていて、もともと日本にあったという説もあります。

 8世紀の奈良時代に完成したとされる日本最古の歌集「万葉集」には、桜の歌は約40首ですが、梅の歌は約120首も詠まれていることから、日本人になじみ深いものだったことが分かります。

 梅と関係が深い人物として、平安時代の学者で政治家の菅原道真がいます。都から九州の大宰府に送られることになった道真は「東風ふかば においおこせよ 梅の花 主なしとて 春な忘れそ」と詠みました。梅の木が道真を慕って、一晩で都から大宰府まで飛んでいったという「飛梅伝説」もあります。

◇いつ実を食べるように?

 奈良時代、貴族たちは桃や梨のように梅を生で食べていました。平安時代には、薬として利用されました。日本最古の医学書「医心方」に梅干しとして登場します。村上天皇は病にかかった時、梅干しと昆布を入れたお茶を飲んで回復したと言われています。鎌倉時代は、お坊さんの酒のさかなとして食べられ、やがて武士に広がりました。

 戦国時代、戦に出る時には、梅干しの果肉と米の粉、氷砂糖の粉末を練った「梅干丸」を持って行きました。江戸時代になると庶民にも広がり、和歌山で作られた梅干しが船で江戸へ運ばれるようになりました。このころにはすでに梅酒も作られていました。

 1962年に法律が改正され、家で梅酒を作れるようになると梅の出荷が増えました。

◇どんな種類があるの?


 400種類以上の品種があり、花を見て楽しむものは「花梅」、実を楽しむものは「実梅」に分かれます。花梅は、実がつきにくかったり、種が大きかったりします。実梅の品種には、南高、豊後、古城、白加賀などがあります。
 梅の産地として知られる和歌山県は、1965年から2022年まで58年連続で収穫量が全国1位でした。全国収穫量の67%を占めます。
 和歌山県で多く栽培されているのが南高梅です。皮が軟らかく果肉が厚く、梅干し用、梅酒やシロップ用のどちらにも適しています。1902年、現在の和歌山県みなべ町で高田貞楠が、大きな実のなる梅の木があることに気づき、その後、小山貞一がその木をゆずり受け、栽培を続けました。
 50年に梅の最優良品種を決めることになり、5年間かけて調査研究が行われました。小山が育てた梅が最優良品種に選ばれ、調査に協力した南部高校の名前をとって「南高梅」と名付けられました。
 

◇梅は体にいいの?


 梅には、クエン酸やカリウムなどが含まれています。
 クエン酸は、食中毒の原因になる細菌が増えるのを防ぐ、疲れのもとになる乳酸を打ち消す、血液をきれいにする、カルシウムの吸収を助けるなどの効果があります。カリウムは血圧が上がるのを抑え、高血圧から来る脳こうそくや心筋こうそくを予防します。
 梅エキスに含まれる物質が、インフルエンザウイルスの増殖を抑える働きがあることも分かっています。明治時代にコレラや赤痢が流行した時には、梅干しの需要が伸びました。
 梅干しは、クエン酸や塩分を補給できるので、疲労回復や熱中症対策にも適しています。ただし、未熟な青梅には有害物質が含まれます。生で食べるのはやめましょう。

◇梅仕事って?

 梅が旬を迎える梅雨の時期に、梅干しや梅酒、梅シロップ、梅ジャムなどを作ることを梅仕事と言います。ここでは、梅シロップを作ってみましょう。

 梅酒や梅の実を使った商品を製造販売している「チョーヤ梅酒」(大阪府羽曳野市)広報の森田英幸さんに聞きました。「夏に汗をかいた時や、のどが渇いた時に、水や炭酸で梅シロップを薄めて飲むと大変おいしいです。かき氷のシロップにしたり、冬はお湯で割ったり、いろいろと楽しめます」と言います。

 そのほかに「種を取って果肉部分を刻んだものをクリームチーズとあえたり、電子レンジやオーブンで乾燥させてドライフルーツ風にしたり、砂糖とレモン果汁を加えて軽く煮立たせて梅ジャムにしたりするなどの利用法があります」と教えてくれました。(2023年06月14日毎日小学生新聞より)