芸術の秋 歌舞伎の魅力、発見!【ニュース知りたいんジャー】

11月に歌舞伎俳優の市川海老蔵さんが「十三代目市川團十郎白猿」を襲名(先人の名を継ぐこと)するのを前に、歌舞伎に注目が集まっています。「芸術の秋」の今こそ、400年あまりの歴史がある歌舞伎の鑑賞に挑戦してみませんか? 難しいと思われがちですが、基礎知識があると楽しく見られます。歌舞伎俳優の上村吉太朗さん、上村折乃助さんに歌舞伎の魅力や楽しみ方を教えてもらったんジャー!【長尾真希子】


◇歌舞伎の成り立ちを教えて


 「歌舞伎は、音楽、舞踊、演劇の三つが一体となった総合芸術です」と折乃助さんは話します。
 始まりは、戦乱の世が終わり、江戸に徳川幕府が開かれた1603年。「出雲大社の巫女」と言う女性の「阿国」が京都で踊った「かぶき踊り」が大流行したことをきっかけに、さまざまな「女歌舞伎」が誕生しました。「風俗を乱す」として、1629年に幕府に禁止されてしまいました。すると、今度は少年だけの「若衆歌舞伎」が人気に。しかしこれも風俗の乱れを理由に禁止されました。
 そして始まったのが、大人の男性が演じる「野郎歌舞伎」です。「ドラマにはヒロインの女性が必要だということで、男性が女性の役を演じる『女形』が生まれました」。これが現在の歌舞伎の原形となり、今に至っています。
 歌舞伎という言葉は、派手な衣装や斬新な動きを指す「かぶき者」が語源です。歌舞伎は京都で生まれ、京都や大坂(後の大阪)、江戸で発達しました。京都、大坂のものは「上方歌舞伎」、江戸のものは「江戸歌舞伎」と呼ばれています。


◇演目の種類が知りたい


 歌舞伎で演じられる演目の数は400以上あると言われていますが、よく演じられるのは100演目程度です。
 「歌舞伎の演目は、『時代物』『世話物』『舞踊』の三つに分類されます」と折乃助さんは説明します。「時代物は、平安や鎌倉、室町時代など、江戸時代より前の出来事を描いた話です。一方、世話物は、江戸時代の庶民の世界を描いた話です。舞踊にはいろいろな種類があり、狂言(しぐさや言葉のやりとりで笑いを誘う喜劇)にヒントを得た作品もあります」
 折乃助さんが小学生にオススメと話す演目は、鬼退治ものの「紅葉狩」や、釣りざおにお嫁さんが釣られてしまうという「釣女」。「最近は、小学生のみなさんにもおなじみの『ONE PIECE』や『NARUTO―ナルト―』といった漫画などを原作にした新作歌舞伎もたくさんあります」


◇独特の演出って何?


 歌舞伎にしかない古い言葉や派手な衣装、かつらなど、歌舞伎には独特の演出がたくさんありますが、最大の特徴は、全ての役を男性が演じているということです。「女性は舞台に立つことはできませんが、大道具や衣装などの裏方のスタッフとして働いている人はたくさんいます」と吉太朗さんは説明します。
 「隈取り」と呼ばれる独特の派手な化粧で、役のキャラクターを判断できるのも、歌舞伎ならではです。「赤は正義のヒーロー、青は悪役、茶色は幽霊など人間以外の役を指しているので、小学生でも話が理解しやすいです」
 「ここを見て」という決めポーズの「見え」も見逃せません。芝居で感情が最も高まる場面で、首を大きく回すなど大げさな動きをした後、表情や姿勢をピタッと止めます。「男性の役を演じる『立ち役』は、『見え』の種類だけでも数えきれないぐらいあります。心を込めて演じているので、ぜひ注目してみてください。舞台の右側(上手)でバタバタと木を打って、見えを盛り上げる『ツケ』の効果音も要チェックです」


◇女形って?


 歌舞伎の特徴の一つに、男性が女性の役を演じる「女形」の存在があります。「いかに女性らしく見せるかが技の見せどころです」と女形の折乃助さんは話します。
 日本教育公務員弘済会兵庫支部が主催し、9月に兵庫県神戸市の小学校で行われた歌舞伎出前授業で、基本となる女形の歩き方を教えてもらいました。
 まず、背中の上の方にある大きな肩甲骨を下げてなで肩にします。着物で胸を守りながら、ひざの間に手ぬぐいをはさみ、落とさないように足のつま先を内側に向けて小股で歩きます。「なで肩を固定し、胸をつきだすように動くのが女性らしく見えるコツです」
 衣装や化粧にも注目です。「赤い衣装を着ていたら、恋にあこがれる役……というように、衣装や化粧、髪形から、役の性格が大体わかるので、小学生でもわかりやすいです」

◇歌舞伎俳優になるには?


 歌舞伎俳優の家に男子として生まれる以外に、普通の家庭に生まれた人が歌舞伎俳優になるには、国立劇場に付属する伝統芸能の伝承者養成所に入学するか、歌舞伎俳優の弟子になるか、二つの方法があります。
 普通の家庭に生まれた折乃助さんは2年間、養成所で修業をした後、上村吉弥さんに入門し、歌舞伎俳優になりました。一方、吉太朗さんは、子どものころから歌舞伎が大好きすぎて、8歳の時に片岡我当さんの部屋子(子どもの時から、歌舞伎俳優のもとで芸だけでなく、行儀などを教えてもらう立場の俳優)となりました。
 折乃助さんは「日本舞踊を習っていたらよいとは思いますが、何よりも子どものころから実際に歌舞伎の舞台をたくさん見ておくとよいでしょう」とアドバイスをしてくれました。
 来年5月に京都・南座で開かれる「南座歌舞伎鑑賞教室」など、初心者向けのイベントもたくさんあります。全国の公演情報が掲載されている「歌舞伎公式総合サイト 歌舞伎美人」などをチェックしてみよう。(2022年10月19日掲載毎日小学生新聞より)