【ニュースがわかる2024年11月号】巻頭特集は世界が注目! アメリカ大統領選

世界で通用する子に育てるために① 「ハードスキル」と「ソフトスキル」│親子で学ぶ 話し方教室

未就学の子供から企業の社長まで、幅広い世代に「話し方」について教えている、一般社団法人日本話し方協会理事長の渡邉由規さんに、「話し方」に関するお悩みやご家庭でできる「話し方」のトレーニング法等をご紹介いただきます。
今回は日本と欧米の違いを紹介しながら、これからの子供たちに何が必要か、お話しを伺いました。

◆日本と欧米の違い

 日本語に「空気を読む」という言葉があるように、「非言語」でも通じ合う日本人の国民性によって、「以心伝心」言葉で伝えなくても察し合える言葉以外のコミュニケーション(非言語)が、生活のあらゆる場面で通用してきました。

 日本では、これまで個性が強い子よりも協調性の高い子、自己主張する子よりも従順な子が「良い子」と一般的に考えられていました。自分の意見を通せば「わがまま」「生意気」とマイナスに捉えられることもありました。
 「集団、調和、協調を重んじる価値観」を受け継いだ日本の子供達が、直接的な表現をためらい、議論や衝突を避ける性格に育っていくのはうなずけることです。他者に共感し、他人のことを気遣う思いやりを育てることは素晴らしいことです。それと同時に「自分のことを他人に理解してもらうこと」を身につけることこそが、これからの時代を生き抜くためにはとても大切なことです。

 一方、多様な人種、民族、価値観が混在する欧米では、自分の考えをきちんと言葉で伝えなければ正しく理解してもらえず、お互いを理解できません。文化背景が異なる相手と円滑な意思疎通をするには、考えを明確にした上で、お互いを理解するために「伝えること」が必須だったのです。なんとなく周囲の意見に合わせ、黙っていることは、「理解していない、意欲がない、何も考えていない」とマイナスの評価を受けてしまいます。

 欧米の子供達は、すでに伝えるスキルを身につけている親によって育てられることから、家庭で「伝える技術」が自然にトレーニングされています。欧米の子育ては、子供が自分の考えをもち、その考えを周囲に伝えることが何よりも重視されています。

 もちろん日本の子供たちもしっかりとした意見や主張をもっています、ただそれを「言葉で伝える」訓練する場や環境が足りません。これまで日本人が大切にしてきたことを保ちつつ、必要な場面ではしっかりと表現できるように準備しておくことは大事なことです。「伝える技術」を、ご家庭などで教えていく場合、子供との会話に「なぜ?」「どうして?」を増やしながら対話をしていきます。問いを増やすことで、思考が深まり考える力、そして豊かな表現力伝える技術が自ずと身についていきます。

◆「ハードスキル」と「ソフトスキル」

 日本とアメリカの学校教育では、「ハードスキル」と「ソフトスキル」に違いがあります。「ハードスキル」とは、テストで測定できる知識や技術のこと。「ソフトスキル」は測定できない技能のことで、コミュニケーション、クリティカルシンキング(論理的・構造的に思考するパターンのこと)、問題解決力、協調性と周囲への影響力のことを指します。

 日本の学校教育は、「ハードスキル」、すなわち「テストで高得点をとる」ことに重点をおき、評価してきました。一方、アメリカは「ハードスキル」のみならず、「ソフトスキル」を磨くために、積極的に授業の中で取り入れ、「社会で成功できる人材の育成」を目指す教育をしてきました。

 日本も一時は「ジャパン アズ ナンバーワン」ともてはやされたこともありましたが、いまやGDPは中国に抜かれ世界3位。「ハードスキル」ばかりでは、世界で通用しないことが目に見えています。「一生懸命勉強して、良い大学に入り、良い企業に就職する」ーーといった、これまでのゴールデンルールは通用しにくい状況です。コロナ禍から先行き不透明な時代だからこそ、柔軟に対応できる大人を目指して、いま何が必要かを考えていきたいですね。

◆社会環境の変化に応じて「知識を応用する力」を

 また昨今の情報化社会(あらゆる知識へ簡単にアクセスできるようになった現代社会)では、知識そのものよりも「知識を応用する技能」の重要性が増しています。社会環境の変化に応じて、学校教育もクリティカルシンキングや、コミュニケーションといったソフトスキルの取組みにシフトしていくことが大切です。

 人生は学校に通い教育を受ける時間より、社会に出てからの方が長いです。その長い道のりでは、教科書には答えが載っていない問題解決を迫られます。その時にどう考え、判断し、行動し、検証すべきか、自分にとってより適切な選択ができれば、回り道することなく歩んでいけるようになります。

 そのために「ソフトスキル」をぜひ身につけていきましょう。


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教えてくれた人

渡邉 由規(わたなべ・ゆき)

一般社団法人日本話し方協会理事長。「渡邉由規 話し方教室」代表講師。
地元の大学を卒業後、大手企業の秘書として働き、その後子育てと並行しながら約20年間テレビ・ラジオのリポーター、MC など経験をもとに、社会で活躍するビジネススキル(話す力、伝える力、聞く力、質問する力、自己表現力)のカリキュラムを開発。
 これまで小学校受験を目指す未就学の子供たちから企業の社長など、国内外の企業研修、人材育成など約3万人以上を指導。個々の能力に合わせた育成指導は定評がある。著書『脱!あがり症 〜あがり症受講生1000人を救った“わたゆき式話し型”を身につけよう〜 』(同文舘出版)『話力集中講義1日10分』(毎日新聞出版)。

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第3章 一目置かれる人になる際立つ話力
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第5章 伝え方の極意
第6章 とっておきの声は、最強のスキル
第7章 論理的な思考ができるスピーチライティング
第8章 究極の技で、話力の専門家へ


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