ロシアによるウクライナ侵攻の影響で、現在世界的に深刻な食料不足に陥っています。
なぜ、戦争によって食料危機が引き起こされたのでしょうか。また、世界的な食料危機という課題にむけてどのように動き出しているのか、いま一度みてみましょう。(ニュースがわかる2022年8月号より)
日本、アメリカやロシアを含む164カ国・地域が加盟する世界貿易機関(WTO)の閣僚会議が6月12~17日、スイスのWTO本部で開かれました。
最大の課題は、穀物の世界有数の産地であるウクライナにロシアが侵攻したことで発生した食料危機。小麦の価格が急激に高くなり、一部の生産国が国内の消費に回すため輸出制限を始め、中東やアフリカなどで深刻な食料不足が発生しています。各国の協調の道が探られ、必要以上に食料の輸出を制限しないとする閣僚宣言が採択されました。
会議では56カ国・地域がウクライナへの連帯を示す共同声明を発表しましたが、ロシアを名指しでは批判できず、中国やインドは参加しませんでした。
WTOのオコンジョイウェアラ事務局長は「多国間協調主義が機能し、WTOが国際社会に対し職務を遂行できると示す時だ」と各国に呼びかけました。
穀物大国ウクライナからの輸出滞る
食糧価格が上がった大きな要因は、黒海沿岸からの船による輸送が滞っていることです。ウクライナからの穀物輸出が難しくなり、ウクライナとロシアの互いを非難していいます。
国連食糧農業機関(FAO)の2021年の統計によると小麦の輸入量に占める両国産の割合はエジプト、レバノンで7割以上、トルコで8割以上、アフリカのソマリアやエリトリアで9割超。こうした地域に影響が出ています。