ニュースがわかるオンラインの人気セミナー「保護者のための中学受験攻略セミナー」の講師が、2025年度の中学入試のために押さえておくべき時事ニュースを、出題ポイントと合わせて解説します。
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◆日本における米(コメ)価格高騰と政府の対応
昨年から今年にかけて米の価格が急激に高騰する「令和の米騒動」と呼ばれる事象が起きています。価格が高騰している主な要因は、不作や猛暑などの気候変動の影響による国内生産量の減少です。特に、2024年の生産量は前年に比べて大きく減少しており、市場への影響は深刻です。
農林水産省の調査によれば、2025年の米の平均価格は2024年の不作を受けて高騰する可能性が高く、これにより消費者の負担が増し、特に低所得層への影響が懸念されています。

政府は米の安定供給を確保するため、「備蓄米」の放出を進めています。備蓄米とは、不作などの緊急時に備えて政府が保有している米で、通常は毎年約20万トンの新米を購入し、約5年間保管されます。2024年6月末時点では、備蓄米の在庫は91万トンに達しています。
農林水産省は、余力が50%以上の精米工場をフル稼働させることで、1日あたり最大1万トンの精米を追加生産できると発表しました。小泉進次郎農林水産相(当時)は「精米できる環境を実現させることで、政府備蓄米の流通加速化につながる」と強調しています。また、備蓄米の放出は卸売業者との随意契約を通じて行われ、必要に応じて小売業者や精米事業者とのマッチングも進められています。こうした対応により、流通の効率化と供給の安定化が図られています。
一方、アメリカのトランプ大統領は、日本の米輸入が少ないことに不満を示し、「日本は深刻な米不足が生じているのにアメリカから米を買おうとしない」とSNSで発言しました。このような国際的な圧力に対し、日本政府は慎重に対応しています。林芳正官房長官(当時)は、トランプ氏の発言には直接コメントせず、米の輸入拡大を検討していることを示唆しました。
国内の供給状況は徐々に改善しています。農林水産省の調査では、卸売業者の約4割が精米設備の稼働率に50%以上の余力を持っていることが明らかになっています。さらに、民間企業による外国産米の輸入も急増しており、2025年5月は前年月平均の約125倍に達しました。これは、弁当や総菜など中食ニーズの高まりもあるとされています。

イオンスタイル天童で販売された政府備蓄米=山形県天童市で2025年6月21日
2025年6月現在、全国のスーパーでは米の価格が連続して下落しており、5キロあたりの平均価格が4000円を下回ったと農林水産省は発表しています。備蓄米の放出が進んでいることが一因とされ、ある弁当チェーンでは政府備蓄米を活用してライス大盛りの料金を値下げするなど、民間でも価格引き下げの動きが見られます。
今後、日本の米市場は、国内外のさまざまな要因に影響され続けると見られます。政府の備蓄米活用や民間企業の輸入拡大、国際的圧力への対応が価格の安定に寄与することが期待されるほか、農業の大規模化や生産コスト削減に向けた取り組みも重要です。
◆中学入試での出題ポイント
出題されるポイントは3点。(1)備蓄米の目的と重要性、(2)随意契約と競争入札の違い、(3)減反政策との関連。知識を問う問題に加えて記述を求めることもあるので、きちんとした理解が必要です。
(1)備蓄米の目的は、国の食料安全保障を確保することです。日本は自然災害や国際情勢の影響を受けやすいため、備蓄米は緊急時における食料供給の安定を図ります。災害時や不作による供給不足に備え、一定量の米を保管し、国民の食生活を守る役割を果たします。
さらに、備蓄米は市場の価格安定にも寄与します。供給不足時に米を放出することで、価格の急騰を防ぐことが可能です。農業政策とも関連し、農家への支援や生産調整の手段としても重要です。このように、備蓄米は国民の食料安定供給を確保し、経済的な安定をもたらすために欠かせない制度です。
【備蓄米】【食料安定供給】【経済的な安定】のワードはおさえておきましょう。また、備蓄米は漢字で書かせる出題がでると予想されます。
(2)随意契約と競争入札は、公共事業や政府調達における契約方法ですが、契約の過程に違いがあります。
随意契約は特定の業者と直接契約を結ぶ方式で、通常は緊急性や特別な事情がある場合に用いられます。例えば、特定の条件下で迅速に物資を調達する必要がある場合に適しています。
一方、競争入札は複数の業者が参加し、価格や条件を競い合う方式で、最も低い価格を提示した業者が契約を獲得します。この方法は透明性が高く、公平性を確保するために広く利用されています。
このように、随意契約は特定の状況下での迅速な対応を重視し、競争入札は透明性と公平性を重視した契約手法です。
ここでは【随意契約】【競争入札】のワードをおさえておきましょう。また、随意契約と競争入札の違いを問う記述問題が出題されると予想されます。
(3)1970年から2017年まで続いた「減反政策」は、米の生産量を抑えて価格を安定させるために導入された農業政策です。しかし、米の消費量が減少し、農業従事者の高齢化や後継者不足が進むなかで、その効果には限界が見られるようになりました。
2018年に減反政策が廃止されると米の生産は自由化されましたが、期待された増産は起こらず、生産量はむしろ減少傾向にあります。現在の稲作では、海外市場への進出や地域ブランドの確立、安全・安心な米づくりなどが重視されています。一方で、補助金の削減や耕作放棄地の増加といった課題もあり、持続可能な農業の実現には農家の工夫と国の支援が不可欠です。具体的には、若者の農業参入支援、ICT技術の活用、地域資源を生かしたブランド米の開発などが挙げられます。農業の変化を通じて、社会の課題や未来への取り組みを考える力が求められています。
ここでは【減反政策】という用語をしっかり押さえておきましょう。また、減反政策と備蓄米の関連を問う記述問題が出題される可能性があります。すなわち、「減反政策は米の過剰生産を抑えるための施策であり、供給減に備えて備蓄米が安全弁として機能する重要な役割を担った」という点を理解しておくことが重要です。