「戦後80年企画」80年前の子どもたち【ニュースがわかる8月号】

受験対策のプロが解説! 時事問題攻略2025【7月号】

 出生数初めて70万人下回る

◆出生率も過去最低、少子化に揺れる日本の今

 近年、日本では出生数(1年間に国内で生まれた日本人の子どもの数)が急激に減少しており、2024年統計開始以来、初めて70万人を下回りました。合計特殊出生率(一人の女性が生涯で産む子供の平均数)も過去最低の1.15を記録し、少子化の進行が急速に進んでいることが明らかになっています。この傾向は深刻な社会問題として広く認識されつつあります。

 日本の少子化には複数の要因が絡んでいます。中でも主要な原因のひとつは、「結婚の減少」です。
 厚生労働省の調査によれば、2022年の結婚件数は48万5063組で、過去10年間で15万組以上減少しています。理由としては、「適当な相手に巡り会わない」「独身の自由さを失いたくない」といった声が多く、結婚や出産への心理的な抵抗感が強まっていることがうかがえます。
 さらに、経済的な要因も大きく影響しています。若い世代は社会保険料の増加や生活費の高騰を背景に、結婚や子育てに対して不安を感じているのが現状です。これが結婚・出産をためらう要因となり、結果として出生数の減少につながっています。

 こうした状況を踏まえ、政府や自治体では少子化対策に取り組んでいます。特に婚活支援は重要施策として位置づけられており、自治体による婚活イベントや結婚相談所の運営を通じて、出会いの機会が増やされています。
 AI(人工知能)を活用したマッチングシステムも導入され、利用者に多様な選択肢を提供しています。たとえば、愛媛県ではAIによるマッチングを導入した結果、お見合いの成立率が2倍以上に向上したとの報告もあります。これらの取り組みは、結婚を望む若者たちにとって心強い支援となるでしょう。

IT技術を駆使したユニークな婚活イベントも。奈良市か開催した「メタバース婚活イベント」では、男女のアバターが仮想空間で交流する

 少子化は日本だけの問題ではなく、世界的にも同様の傾向が見られます。特に韓国では、合計特殊出生率が0.72と極めて低く、1970年の4.53から大幅に落ち込んでいます。一方で、フランスやメキシコなどは比較的高い出生率を維持しており、フランスでは1995年以降の子育て支援策が功を奏しています。ドイツでも「親手当」や「親時間」といった制度が出生率の改善に寄与してきましたが、近年は再び低下傾向にあります。

 専門家の間では、少子化は単なる出生数の減少にとどまらず、将来的な経済や社会保障に重大な影響を及ぼす可能性があると懸念されています。学習院大学の鈴木亘教授は、若年層の減少や晩婚化の進行の中、結婚支援が少子化対策の要であると指摘。加えて、「社会全体で家族を築く楽しさを伝えていく雰囲気づくりが重要」と強調しています。
 日本の少子化問題は、経済的・社会的要因が複雑に絡み合っている課題です。政府・自治体による支援の充実に加え、若者たちが結婚や子育てへの不安を軽減し、より多くの出会いに恵まれる環境を整えることが求められています。少子化対策は個人のライフスタイルに関する問題にとどまらず、社会の持続可能性を左右する重要課題であり、今後も継続的かつ積極的な対応が求められます。

◆中学入試での出題ポイント

 出題されるポイントは、(1)出生数の推移、(2)婚姻率と出生率の関係、(3)少子化対策――の3点です。知識を問う問題に加えて記述式の設問も含まれるため、的確な理解が求められます。

(1)日本の出生数は近年急激に減少しており、2024年には初めて70万人を下回り、68万6061人となりました。
 この背景には、結婚率の低下晩婚化経済的不安が関係しています。出生数の減少は、将来的な労働力人口の減少や社会保障制度への影響が懸念されるため、政府や自治体は婚活支援子育て支援策の強化を進める必要があります。
 【少子化】【出生数】のキーワードを押さえながら、出生数の減少がもたらす社会的影響について述べる記述問題が出題される可能性があります。

(2)婚姻率と出生率には密接な関係があります。結婚が出生の主要因となるため、【婚姻率】が低下すると【出生率】にも影響が及びます。
 日本では晩婚化・未婚化が進行し、2024年の合計特殊出生率は過去最低の1.15となりました。若者が結婚をためらう要因として、経済的不安やライフスタイルの変化が挙げられます。結婚の減少に伴って出産の機会も減少し、その結果として出生数も減少しています。
 【婚姻率】【出生率】のキーワードに着目し、婚姻率の低下要因と出生数への影響を説明する記述問題に備えましょう。

(3)日本における少子化対策は、結婚・出産の促進に向けた多角的な施策が求められています。
 まず【婚活支援】として、自治体が主催する出会いイベント結婚相談所の活用が進められています。これにより、出会いの機会の創出が期待されています。次に【経済的支援】として、児童手当や育児休業制度の拡充、保育施設の整備により子育て負担を軽減し、安心して子どもを持てる環境づくりを目指します。さらに【働き方改革】による労働時間の短縮フレックスタイム制度の導入など、育児と仕事の両立支援も進められています。
 加えて、子育ての意義や楽しさを伝える教育・啓発活動も、少子化対策の一環として重要です。これらの施策を総合的に推進することで、少子化問題の解決に向けた道筋を築くことができます。
 【婚活支援】【経済的支援】【働き方改革】のキーワードを押さえておきましょう。政府や自治体の具体的な対策例を挙げて説明する記述問題が出題される可能性があります。

記事を書いた人:菅原 祐二(すがわら・ゆうじ)
株式会社ミライクリエ代表。大手進学塾で、中学受験・高校受験最難関レベルの指導を担当。御三家をはじめ多数の難関校に合格実績をもつ。また、管理職として塾運営部門及び受験部門の担当も従事。そのノウハウを活かした様々な研修経験も豊富で、教育にまつわる様々なテーマで講演も行う。
現在は、”未来を想像し、創造する”を理念としSDGsをはじめとしたサステナビリティ教育事業・STEAM教育を中心に、支援・促進。教科書だけで学ぶことのできない本質的な学びの場を提供し、「持続可能な社会」への貢献を目指している。

【株式会社ミライクリエのホームページ】
https://mirai-crea.hp.peraichi.com/corporatesite/

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