ニュースがわかるオンラインの人気セミナー「保護者のための中学受験攻略セミナー」の講師が、2025年度の中学入試のために押さえておくべき時事ニュースを、出題ポイントと合わせて解説します。
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◆トランプ大統領の関税政策のねらいとは?
アメリカのトランプ大統領は、2025年4月5日から、すべての国や地域に対して一律10%の関税をかけることを決めました。
関税とは、外国から物を輸入するときに追加で払うお金のことで、これによって輸入品の価格が高くなります。たとえば、アメリカが日本から車を買う場合、これまでの価格に加えて関税分の10%を払わなければならなくなります。この政策は、アメリカの産業を保護し、国の経済を強くするために導入されました。

関税の簡単なしくみ。税収によって国のお金を増やすとともに、国内製品が輸入品に価格で負けないようにする効果がある
トランプ大統領は「最低でも10%の関税は維持する」と話しており、一部の国に対してはもっと高い関税を課す可能性も示唆しています。特に中国との貿易摩擦が続いている中で、中国からの輸入品には最大80%の関税をかけることを検討していると発言しました。これは、アメリカ国内の企業を守るための措置ですが、中国との貿易関係がさらに悪化する可能性があります。
日本政府はこの関税政策に対して強く反対しています。青木官房副長官は「日本政府としては、すべての関税を撤廃することを目指している」と発言し、アメリカとの交渉を続ける考えを示しました。高い関税があると、最終的に日本がアメリカから商品を買うときの費用が増え、企業の負担が大きくなります。その結果、日本の経済にも悪影響が及ぶ可能性があるため、日本政府は交渉によって関税の撤廃を求めています。
この政策の影響はアメリカ国内だけでなく、世界全体に及びます。関税が高くなることで、国々の間の貿易の流れが変わり、経済のバランスが崩れる可能性があります。
関税をかけると、外国製品の価格が高くなるため、アメリカ国内の企業が優位に立つことができますが、その一方で外国の企業はアメリカでの商売が難しくなるかもしれません。また、日本を含む他国との関係が悪化する可能性もあり、貿易交渉が重要な役割を果たします。
世界の貿易は、多くの国が関わる複雑な仕組みで成り立っています。貿易を円滑に進めるためには、各国がお互いに協力し、ルールを決めることが大切です。しかし、関税が高くなると輸入が減り、貿易がうまくいかなくなることもあります。そのため、アメリカの関税政策が今後どのように変わるのか、各国が注目しています。

日米間の関税交渉を進める赤沢亮正経済再生担当相=2025年4月30日
◆中学入試での出題ポイント
関税の基本的な仕組みや目的を問う問題や関税に関連する略語などが、よく出題される傾向にあります。
関税とは、外国からの品物を日本に輸入するときにかかる特別な税金のことです。この税金をかけることで、日本の企業や工場を守ることができます。たとえば、日本で作られた洋服と外国から輸入した洋服があるとします。もし輸入品が安すぎると、みんなが外国の洋服ばかり買ってしまい、日本の洋服メーカーが困るかもしれません。そこで、日本政府は関税をかけることで、国内の産業がちゃんと競争できるようにするのです。
関税には、大きく分けて保護貿易と自由貿易という考え方があります。保護貿易では関税を高くして国内産業を守りますが、自由貿易では関税を低くして国際的な貿易を活発にします。どちらが良いかは国や状況によります。
関税に関連する略語は、以下のようなものを押さえておきましょう。
・FTA(自由貿易協定):関税の削減や撤廃を目的とした協定
・EPA(経済連携協定):関税だけでなく、知的財産や投資ルールを含む協定
・WTO(世界貿易機関):国際貿易のルールを定め、貿易摩擦を解決するための機関
・TPP(環太平洋経済連携協定):太平洋周辺国の関税引き下げを目指す協定
たとえば、過去の入試では「TPPに加盟していない国を選ぶ」という形式の問題が出題されています。
TPP(環太平洋経済連携協定)には、2025年5月現在「日本、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、メキシコ、シンガポール、ベトナム、マレーシア、ペルー、チリ、ブルネイ、イギリス」の12か国が加盟しています。2017年1月にトランプ政権下でアメリカ合衆国はTPPから離脱、2024年12月にイギリスが加盟しました。
中学入試では、関税の基本的な仕組みや目的を理解した上で、さらに時事問題と関連付けて考えることが大切です。「関税が高くなると輸入品の価格はどうなる?」「関税を下げると日本の産業にはどんな影響がある?」といった問題が出ることもあるので、ニュースをチェックしながら学習していくことをおすすめします。