◆南海トラフとは?
南海トラフは、日本の南側に位置する海溝で、フィリピン海プレートがユーラシアプレートの下に沈み込む場所です。静岡県から九州にかけて延びており、日本の地震活動が特に活発な地域の一つです。
プレートが沈み込むと、地殻にひずみが蓄積され、これが大地震を引き起こす原因となります。南海トラフでは過去に数回の大地震が発生しており、これらの歴史的データから将来的な地震の予測が行われています。
南海トラフ地震は過去のデータから100年から150年の間隔で発生しており、現在は前回の地震から約80年が経過しています。国の地震調査研究推進本部によれば、今後30年の間に60~90%程度以上の確率で地震が発生するとされていますが、別の計算方法では20%から50%の確率とも言われています。このように確率は条件によって異なり、予測が難しいことが特徴です。
仮に地震が発生した場合、震源に近い高知県や静岡県では震度7、東京でも最大で震度5強の揺れが予測されています。さらに、神奈川県から鹿児島県にかけての24府県で震度6弱以上の揺れが起こるなど、広範囲にわたって影響が出ることが懸念されています。
最大の脅威は津波です。最大34メートルの高さの津波が沿岸部に押し寄せるとされ、最も早いところでは地震発生からわずか2分で津波が到達します。東日本大震災の際には、津波が到達するまでに約30分かかりましたが、南海トラフでは震源が陸の真下にあるため、津波の到達が早いのです。2分という短さは地震の揺れが続いている間に津波が襲ってくることを意味しており、迅速な避難は非常に困難です。

関東から九州にかけて、大きな地震を観測する可能性がある
南海トラフ地震による被害は、死者数や建物の全壊・焼失数にとどまらず、経済面にも影響を及ぼします。最悪の事態を想定すると、死者は29万8000人、全壊・焼失235万棟、経済的損失額は292兆円に達すると予測されています。
経済的損失額については、日本の年間国家予算の2倍以上に相当します。これは、被災地が「太平洋ベルト」(南関東から北九州にかけて連なる、工業が盛んな地域)と重なることが大きな理由の一つです。工業製品出荷額に換算して、国内シェアの実に7割を占める地域が一気に被災することになります。
さらに地震発生後は水道、電気、ガスといったインフラが停止し、携帯電話も通じなくなるため、生活面にも大きな影響が出ます。主要な空港や交通網が浸水し、日本全体の物流が麻痺する可能性も決して小さくありません。
南海トラフ地震は、過去の歴史からもその発生が予測されており、準備や対策が必要です。特に、地域住民や自治体が連携して避難計画を策定し、津波警報や地震情報を迅速に伝える体制を整えることが重要になるでしょう。
◆中学入試での出題ポイント
中学入試では、南海トラフの地理的位置や地震のメカニズム、過去の地震の事例について理解していることが求められます。
南海トラフは静岡県の駿河湾から始まり、愛知県、三重県、和歌山県、徳島県、香川県、愛媛県を経て、最終的に宮崎県の日向灘沖に至ります。この地域では、過去に大規模な地震が何度も発生しており、特に1946年の南海地震は、紀伊半島や四国地方に甚大な被害をもたらしました。
過去の地震の主な事例ですが、3つおさえておきましょう。
阪神・淡路大震災(1995年1月17日、マグニチュード7.3)は兵庫県南部で発生し、神戸市を中心に6434人の命が失われ、経済的損失は約10兆円に達しました。この地震は都市型災害の典型例として日本の防災意識を高める契機となりました。
東日本大震災(2011年3月11日、マグニチュード9.0)は三陸沖で発生し、巨大津波が東北地方を襲い、約1万8500人が死亡または行方不明となり、福島第一原子力発電所事故も引き起こされました。経済的損失は約17兆円で、復興には長期的な努力が必要とされています。
能登半島地震(2024年1月1日、マグニチュード7.6)は石川県能登地方で発生し、最大震度7を記録し、死者241名、負傷者1296名、全壊7704棟、半壊9467棟の甚大な被害が報告されました。震源が浅かったため強い揺れが広範囲に及び、復興支援が現在も進行中です。

能登半島地震で津波被害のあった石川県能登町・白丸地区の様子
緊急地震速報に関する出題も増えてきています。たとえば、「緊急地震速報は何を検知して、どのように情報を伝えるのですか?」や「緊急地震速報が発信されることで、どのような利点がありますか?」などです。記述して答えることもありますので、仕組みをしっかり理解しておきましょう。
緊急地震速報は、地震が発生した際に強い揺れが来る前に、その情報を事前に知らせるシステムです。このシステムは、全国各地に設置された地震計を用いて、地震の初期微動であるP波を検知します。P波が検知されると、その情報はコンピュータに送信され、震源地からの距離や揺れの強さを予測します。その後、各地域にS波(P波より遅れて伝わる、地面を大きくゆらす波)が到達する前に、スマートフォンやテレビなどを通じて警報が発信されます。
このようにして、事前に揺れの到来を知らせることで、避難や安全対策を促すことができます。
雑誌のご購入ご希望の方は「ブックサービス」まで

上のバナーをクリックすると「ブックサービス」につながります。
- 1
- 2