スクールエコノミストは、私立中高一貫校の【最先進教育】の紹介を目的とした「12歳の学習デザインガイド」。今回は普連土学園中学校を紹介します。
モデルロケット国際大会で優勝! 理数教育で注目のミッションスクール
<3つのポイント>
①理科部モデルロケット班がロンドンの国際大会で優勝
②思考力と記述力をアップし、本質から理解する数学教育
③夢中になれることに出会い、全力投球できる学園風土
世界最高レベルの課外活動 失敗を乗り越え手にした国際大会での優勝
1887年、キリスト教フレンド派により女子教育を目的に設立された普連土学園。国際連盟事務局次長も務めた、新渡戸稲造の助言によるものだった。創立以来「少人数教育」にこだわり個々の生徒に行き届いた指導を行ってきた同校は、理数科目が好きな女子生徒にとっても理想的な環境だ。
例えば理科部は、約50名の部員が、モデルロケット班・鉄道模型班・鉄道5 inch班・ガラス細工班という4つの班に分かれ活動する。部員は明るく気さくで、積極的な生徒が多いという。いずれも学外のコンテストで優秀な成績を残してきたが、中でもモデルロケット班はモデルロケット協会主催「ロケット甲子園」の上位常連校だ。2018年より3年連覇を果たし、ついに昨年7月、イギリスで開催されたモデルロケット国際大会で優勝を収めた。日本初の快挙だった。
同大会は青少年の航空宇宙産業への関心を高めることを目的に、日・米・英・仏の4カ国を代表する中高生たちが「教育用小型ロケット」の精度を競う世界的な大会。競技内容は、宇宙飛行士に見立てた生卵をロケットに搭載し、指定の高さ(800m)まで打ち上げ、パラシュートで着地・回収するというもの。生卵が割れていたら失格だ。審査には英語によるプレゼンテーションも含まれるため、英語力や表現力も問われる。
優勝までの道のりは失敗と克服の連続だったという。「最も印象に残っている大きな失敗は、確認をしないまま行動に移してしまったこと」と部員の江川さん。自身の確認不足により製作に時間のかかる部品を作り直すことになり、「シミュレーションを行うことの大切さを学んだ」。中川さんは、「当初は自分の記憶力を過信していた」と話す。チームメイトと連携を図るにあたり「誰が見ても分かる記録を残すことが重要」と気づいた。いずれも、今の自分たちにできることを探し、緻密な計画を立て、最後まで諦めなかったことが今回の成果につながったという。 また、江川さんは国際舞台を経験し「工学系の分野にも女性が多く、全員が堂々としている姿に日本との文化の違いや憧れを感じた」と語る。将来の夢は、時代の最先端分野で活躍するエンジニアになることだ。研究者を志す中川さんとともに、理工系学部への大学進学を決めた。
思考力を着実に積み上げる数学教育 算数1科目入試では幅広い単元から出題
ロケット班の活躍の基盤には、同校独自の理数教育がある。数学は中1から高2までクラスごと2名の教員を配置し、ティーム・ティーチングや分割授業を行うなど教育体制は手厚い。授業ではペアワークを重視し、互いに説明したり教え合うことで、数学の土台となる用語や定義・定理を確実にマスターする。そして単元が終わるごとに難易度の高い「思考力問題」を実施。自力で試行錯誤する力や、規則・法則を見つけ出す力を養う。
着実に思考を積み上げられるよう、途中式や考え方を記述することも同校のこだわり。これらの力は中学入試でも重視する。「1日午後算数入試」は、試験時間は50分、出題数は50問。基礎力を測る問題に加え、定理や知識を活用する柔軟性の求められる問題などがバランスよく出題されている。
- 1
- 2