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【ニュースがわかる2024年5月号】巻頭特集は10代のための地政学入門

スクールエコノミストWEB【富士見中学校編】

スクールエコノミストは、私立中高一貫校の【最先進教育】の紹介を目的とした「12歳の学習デザインガイド」。今回は富士見中学校を紹介します。

「自ら動く」を大切にした探究学習 グローバル教育が新たな視点へ導く

<3つのポイント>

① 高校の探究学習で社会の課題を知り、自らの興味関心をつなげる

② 中学の探究学習で、研究の基本的なスキルを徹底的に習得

③ グローバルセンターが海外留学や大学進学の希望者を支援

「探究学習」で社会の課題と自らの興味関心をつなげる

 「社会に貢献できる自立した女性の育成」を目指す富士見中学校高等学校。その柱となる学びが『探究学習』だ。高1の探究テーマは「SDGs」。「貧困をなくそう」「飢餓をゼロに」「質の高い教育をみんなに」「ジェンダー平等を実現しよう」「海の豊かさを守ろう」「陸の豊かさも守ろう」など自分の関心のあるテーマでグループをつくり、フィールドワークやインタビューを行って社会の課題を体感。課題解決のためのポスター掲示、募金、ボランティアなど行動に移すことを重視する。

 高2・3は、学びの集大成となる「学びの履歴書(卒業研究)」に挑戦。テーマ探しの手助けとなるのが、本を手がかりに発想し、思考を広げる「探究型読書」だ。ベースとなるのは、自然科学を研究する理化学研究所と本の可能性を追求する編集工学研究所が展開する「科学道100冊」の取り組み。本を読む前にタイトルを見て内容を想像する、目次から内容を予測して本の帯を作るといったワークを通じ、新しい発想や柔軟な思考をはぐくむことを目的とする。中高6年間の探究学習を支援する宗愛子・司書教諭は、「生徒たちは、どんなことが書かれているかわからない状態で本の内容を想像し、そこから初めて本を開きます。幅広い分野の本を自由連想で「組み合せ編集」すると興味関心が浮き上がる。いわば目的としての読書ではなく、何かを考えるための手段なのです」と探究型読書の長所と効果を分析する。

 テーマが決まったら、1万字以上の論文作成に取りかかる。ある高3生は「論文で書いたことが授業内容とリンクすることも多く、自主的に調べ、考えるという“学びのループ”が生まれる」と真剣に取り組むことのメリットを語っている。論文は書いて終わりではなく、担当教諭との面談でフィードバックを行い、3年間の研究総括を生徒自身の言葉で話す。「この振り返りが将来にわたって必要な自律的な学びの姿勢をはぐくみます」(宗先生)。

Learning Hub(図書館)での中学生
 

「探究学習」の土台となるスキルを徹底的に学ぶ中学校

 中学校では探究に必要な基本的なスキルを身につけるため、「問う」「調べる」「伝える」を目標にプログラムを編成。練馬区をフィールドに活動する中2の「ねりま探究」では、グループごとに環境や高齢者、防災、子育ての4つのテーマで探究。高齢者のために何ができるかを考えたグループが、高齢者施設の利用者と文通を始めるなど実践につながる例もみられる。また、自分でテーマをみつける中3の「my探究」では、「キャッシュレス決済は今後普及していくのか?」「誰も取り残さない校則にするために」などオリジナリティ溢れるテーマが多数。論文は電子書籍化してほかの生徒とも共有し、互いにフィードバックすることで新たな視点を得る。