小泉八雲を研究する早稲田大学名誉教授の池田雅之さんは、八雲が見いだした古き日本のよさを、今、多くの人が見直しているといいます。そんな八雲の文学を池田さんに解説してもらいました。(「Newsがわかる2025年10月号」より)
西洋化、近代化の逆を行
※太字のカギカッコは池田さんの発言
小泉八雲がやって来た明治時代の日本は、軍国主義が勢いづき、富国強兵をかかげて近代化を急いでいました。欧米から技術者、学者、医師をまねき入れ、西洋に追いつけ追いこせとばかりに知識を吸収しました。
「ところが八雲は方向性が逆。日本のみんなが打ち捨てた浮世絵や手作りのもの、古い風習、自然信仰、アニミズム(あらゆるものにたましいが宿るという考え方)的なものに引かれました。日本人の精神性や霊性(精神に宿っているふしぎな働き)を大事にしたい人でした」
19世紀の欧米には、日本の芸術を評価し、浮世絵やうるし工芸、焼き物をめでる異国趣味(ジャポニズム)がありました。その風潮の中で、八雲の書いたものは「文学のジャポニズム」として受け入れられたようです。