今年は、5年に1度の「ショパン国際ピアノコンクール」がポーランドの首都ワルシャワで開かれます。「世界3大コンクール」の一つと言われ、10月3日から本大会の第1次予選が始まり、18日からは本選があります。どんなコンクールなのでしょう。
「ピアノの詩人」と呼ばれた19世紀前半の作曲家フレデリック・ショパンを記念して、母国ポーランドで原則5年に1度行われます。1927年に第1回大会が開かれ、今回で19回目です。ショパンが亡くなった「命日」である10月17日近くに催されます。
音楽で世界を目指す若者の挑戦の場としては最高峰で、ベルギーのエリザベート王妃国際音楽コンクール、ロシアのチャイコフスキー国際コンクールと並ぶ「世界3大コンクール」です。
二つのコンクールと違うのは、ショパン国際ピアノコンクールは、部門がピアノだけ、曲はショパンのものだけに特化している点です。バイオリンやチェロ、声楽といった他の部門はなく、若きピアニストたちが、ひたすらショパンの曲を演奏します。
出場には年齢制限があり、今回は1995年から2009年までに生まれた人が対象です。予備審査、予備予選、本大会の第1~3次予選、本選を経て優勝者が決まります。エチュードと呼ばれる練習曲や、ポロネーズ、ソナタ、オーケストラとの協奏曲などの課題曲を演奏し、審査員は過去の入賞者らが務めます。
まず予備審査で書類と自身の演奏動画を提出し、約160人が予備予選に進みます。4~5月に行われる予備予選は、ワルシャワで実際に演奏します。本大会に出場できるのは約80人です。
10月から始まる本大会は第1次予選、第2次予選、第3次予選があり、厳しい審査を通過した約10人が本選に挑みます。本選は18日から20日まで行われます。1位には賞金6万(約1020万円)が贈られます。
今回、課題曲がいくつか変更されましたが、もっとも大きな変更点は本選の課題曲です。2曲のピアノ協奏曲のいずれかに加えて、「幻想ポロネーズ」という曲が新たに課されました。
ショパンは1810年にポーランドで生まれました。子どものころからピアノ演奏に優れ、ワルシャワ音楽院に入学します。卒業後、20歳でオーストリアのウィーン、さらにフランスのパリへと旅立ちました。リストやメンデルスゾーンといった作曲家と親交を結びました。ショパンがウィーンへたった後、ポーランドで反乱が起き、二度と帰国することなく39歳で亡くなりました。
ショパンの曲はエチュード、ノクターン、ワルツをはじめ、ポーランドの民族的リズムで書かれたポロネーズやマズルカもたくさんあります。ほとんどがピアノ曲で「ピアノの詩人」と呼ばれます。曲は「華麗」「繊細」と評されますが、祖国ポーランドへの思いを理解して弾くことも大切だといわれます。

フレデリック・ショパンの肖像 アリ・シェフェール、1847年、油彩、カンバス credit:Dordrechts Museum
新型コロナウイルス感染症が流行し1年延期になった2021年の前回大会で、反田恭平さんが2位、小林愛実さんは4位になりました。反田さんの2位は1970年の内田光子さんと並ぶ日本人最高位で、半世紀ぶりの快挙となりました。
日本人の優勝者は、まだいません。ほかに、65年に中村紘子さん(2016年死去)が4位、1990年には横山幸雄さんが3位になっています。
また、全盲のピアニストとして知られる辻井伸行さんは2005年、17歳で出場。本選に進むことはできませんでしたが、「ポーランド批評家賞」を受賞しました。辻井さんは2009年に日本人で初めてアメリカのバン・クライバーン国際ピアノコンクールで優勝し、国際的に活躍しています。
予備審査に過去最多の642人の応募がありました。予備予選を経て、84人が本大会に進出します。
日本人の出場者は13人です。10人が予備予選を通過しました。そのうちの一人、高校1年の中島結里愛さん(15)は、今大会最年少での本大会出場を決めました。
前回大会で第3次予選まで進んだ進藤実優さん(23)も出場します。そのほかに、有名な国際コンクールで上位に入賞し、予選を免除された牛田智大さん(25)ら3人が選ばれました。大舞台での活躍が楽しみですね。

中村紘子さん(1965年、4位)=2009年撮影

内田光子さん (1970年、2位)

横山幸雄さん(1990年、3位)

小林愛実さん(2021年、4位)

反田恭平さん(2021年、2位)
(2025年9月17日毎日小学生新聞より)
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