現代の科学では、日時や場所を特定して地震の発生を予測することはできません。ただ過去の大地震から知っておきたい情報は多数あります。50年以上、災害や危機管理の研究をしている河田恵昭さんに、これまでの大地震から学ぶべきこと、災害から命を守る知恵や習慣を教えてもらいました。(「Newsがわかる2025年9月号」より)
過去の災害から学ぶべきこと
2011年3月の東日本大震災では、直後に約1万6000人が亡くなりました。巨大な津波に襲われたからです。現地調査をした結果、最初に津波が到達した岩手県の沿岸部で、地震の発生から津波の到達まで約30分あった。すぐに高台などに逃げていれば、多くの人が助かっていたはずです。
岩手、宮城、福島3県の津波で水につかった沿岸部には、およそ57万人が住んでいました。実はそのうちの27%が避難しなかったのです。
つまり、東日本大震災では「逃げなくても大丈夫」という思い込みから逃げなかった人が大勢いた。この事実をきちんと理解しないと、同じことが繰り返されます。そうならないよう過去の災害を正しく知り、「自分ごと」として向き合ってほしいのです。