点字は、見えない人にとって、自分で読み書きできる文字です。今年は、フランスのルイ・ブライユが点字を考えついて、200年という節目の年です。世界には、その国の言葉に応じた点字があります。日本ではいつ生まれ、今はどんなふうに使われているのでしょうか。知りたいんジャーと探ってみました。
点字は六つの点を組み合わせてできています。この仕組みを考えたのが、ルイ・ブライユ(1809~52年)です。
ブライユは、ナイフの刃が片方の目に刺さった事故をきっかけに、5歳で両方の目が全く見えなくなりました。その後、目が見えない人たちが学ぶ盲学校(現在の視覚特別支援学校)で勉強をするうちに、目が見えない人が自分で読んだり、書いたりできる文字を作ろうと考えました。
元になったのは、フランスの軍人が、夜でも明かりをつけずに読めるようにと考えた暗号のようなものでした。縦に六つの点、横に2列という合計12個の点を使っていました。「夜の文字」とも呼ばれていました。
ただ、点が12個もあると、文字が複雑になってしまうほか、点字は指先で触れて読むため、読み取るのに時間もかかってしまいます。ブライユはこれを改良して、六つの点でアルファベットを表現する今の形を完成させました。1825年、ブライユが16歳の時でした。
日本で最初にブライユの点字が紹介されたのは、江戸時代の末期の1866(慶応2)年とされています。ブライユの点字はフランス語のアルファベットをはじめ、ピリオドなどの記号を63の組み合わせで示していました。それに対して日本語の仮名文字は48あります。ブライユの点字をそのまま日本語にあてはめたのでは、うまくいきません。そこで、日本語の点字を考える必要がありました。
中心になったのが、石川倉次(1859~1944年)という人です。石川は、日本で2番目に作られた、見えない、聞こえない子どものための学校「東京盲啞学校」(現在の筑波大学付属視覚特別支援学校、同聴覚特別支援学校の前身)の教員でした。「どうすれば分かりやすいか」。3年あまりにわたって生徒たちと一緒に研究を重ねました。この学校には点字を決める会議があり、1890(明治23)年11月1日、三つの案の中から、石川案が選ばれました。

日本の点字を考え出した石川倉次。日本点字の父とも呼ばれている
点字は縦に三つ、横に二つ、合計六つの点の組み合わせで表現します。指で触って読み取るため、触れるとプツプツしています。
六つの点は、左上から「1の点」「2の点」と続き、右の一番下が「6の点」になります。点字は全て横書きで、左から右へ向かって読みます。書く時はその逆で、右から左へ向かって書きます。
日本の点字はローマ字のように、母音を、1と2と4の点を使い表現します。「あ」は1の点、「い」は1と2の点、「う」は1と4の点、「え」は1と2と4の点、「お」は2と4の点で表現します。子音は残りの三つの点を使います。「か」行は母音に6の点を加えます。数字やアルファベットをはじめ、楽譜も表現できます。
世界には、その国の言葉に応じた点字があります。中央アジアの国、キルギスからの留学生は「ルールが分かれば、日本の点字も簡単に読めます。でも、日本語は同じ音で違う意味のことばがたくさんあり、使いこなすには難しいです」と話していました。
見えない人はどんなふうに点字を使っているのでしょうか? 大阪市にある点字出版会社で働く久部幸次郎さん(57)に聞きました。
久部さんは生まれつき目が見えません。勉強や本を読むときには点字を使ってきました。「点字は指先で触って読みます。他の人に読んでもらうには書くことも大事です」と話します。今は広報紙を点字に変換して印刷しています。久部さんはパソコンや点字用の電子機器などを使い、指で触れながら点字に間違いがないかをチェックします。点字は音で表現する文字であるため、地名の読み方や専門用語の意味を確認するのに、インターネットを使います。その時は文字を読み上げてくれるソフトが活躍します。
久部さんは、家族にパスワードを教えるとき、点字を使っているそうです。「暗号みたいで面白いでしょ」と笑います。久部さんは「ぜひ、目が見える人も、点字に興味を持ってほしいです。目で読んだり書いたりすることができれば、一つ別の文字を覚えることができますよ」と話していました。
久部さんは視覚障害のことを知ってもらおうと、小学校で講演もしています。小学生に「どこで点字を見たことがありますか」と質問すると、かつては駅の券売機が多く挙がりました。最近はエレベーターや、駅の階段の手すりと答える子たちが多いそうです。
私(記者)も改めて、点字を探してみました。毎日新聞の東京本社があるパレスサイドビルには、エレベーターの階数などを示す点字がついているものがありました。トイレの水を流すボタンにも点字がついていました。
また点字は、家電のボタンをはじめ、大人が飲むアルコール飲料の飲み口の横には「おさけ」と打ってあります。誤って、視覚障害のある子どもが飲むことがないように、注意を呼びかける意味もあります。
公共施設には、例えばトイレがどういう配置になっているかを点字や点図(点を使った図)で示すような案内板なども設置されています。皆さんのそばにもあちらこちらにあります。ぜひ、楽しみながら探してみてください。

エレベーターの階数を知らせる数字のボタンの横には数字を示した点字が付けられていました=東京都千代田区一ツ橋のパレスサイドビルで
(2025年5月14日 毎日小学生新聞より)
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