日本では昔から贈り物にパッケージが利用されていました。パッケージは時代や人の価値感が根強く結びつき、今もそのありかたを変えています。(「Newsがわかる2025年1月号」より)
「日本には古来、神様へのお供えを白い和紙に包んでささげる風習がありました」と話す日本パッケージデザイン協会の山崎茂さん。古くから神様への献上品として活用されたのが、「のしあわび」だったのです。
室町時代の武家社会では、贈り物を包むことが礼儀作法となりました。「例えば筆を贈る場合、筆を包む折り方が決まっていて、折り方を見れば中身が相手に伝わりました」と山崎さん。のしあわびにも正式な包み方が確立され、江戸時代に入ると、贈り物にのしあわびをそえて、お祝いの気持ちを示すようになりました。
栄養価の高いあわびを、腐らないようにうすく切って伸ばして乾燥させた、のしあわび。伊勢神宮への献上品として生まれ、今も三重県鳥羽市で作られ、奉納されている
祝いごとの儀礼形式の、のしあわび。祝いごとに欠かせないものに
「時代や社会の価値観の変化が、パッケージに表れます」と山崎さんは話します。昭和末期ごろからは、食べきれなかった分のおいしさを保つため、小分けにする個包装が一般化。一方、平成に入ると、シャンプーや洗剤などは中身をつめかえて使うのが当たり前となり、つめかえ用パッケージの開発が盛んになりました。
令和に入り、プラスチックごみの海洋汚染が社会問題になると、プラスチック素材はできるだけ使わないという流れに変化しています。
「今の時代、パッケージ作りのテーマは『循環型の社会への適応』。どの分野でもリサイクルや再利用を念頭に置き、開発しています」と山崎さん。
江崎グリコの「ポッキー」は2パック入り。個包装にした理由の一つに友だちへの「おすそわけ」もあるという
日清食品の「カップヌードル」。カップの原料は発泡スチロールだったが、2024年からは紙に。また、ネコの耳のようなダブルタブを採用し、プラスチックのふた止めシールを廃止した
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