栃木県立博物館の学芸員、山本航平さんは子どものころ、昆虫を取り殺して生えるキノコの冬虫夏草に魅せられました。以来、菌類を研究する山本さんにユニークなキノコについて教えてもらいました。(「Newsがわかる2023年10月号」より)
虫を殺して生えてくる
昆虫好きの山本さんは小学2年の時、冬虫夏草の存在を本で知り、地元のキノコ観察会に参加して探すようになりました。
冬虫夏草の菌糸は、さまざまな昆虫の体に入り込み、増殖します。やがてその虫は死に、虫の体の中が菌糸でいっぱいになったところで子実体を生やします。山本さんが初めて発見した時は、土の上にマッチぼうのようなキノコが生えていて、ほり出したら根元にセミの幼虫がつながっていました。
それから何度も冬虫夏草の新種を見つけ、2017年には栃木県内の雑木林でコメツキムシの幼虫とさなぎから生えたものを発見しました。そのクサイロコメツキムシタケを3年後に新種として発表しました。
ツクツクボウシなどの幼虫に寄生する冬虫夏草のヤクシマセミタケ=茨城県内で2020年7月(山本さん提供)
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