自民党「派閥」変わる役割【ニュース知りたいんジャー】

政治のニュースの中で、「○○派」という言葉を目にしませんか? どうやら、政権を支える与党、自民党(自由民主党)の議員がつくっている集まりのようです。「派閥」と呼ばれますが、何をしているのでしょうか。政治にくわしい一橋大学大学院社会学研究科教授の中北浩爾さんに聞きました。【田村彰子】

◇「派閥」って何なの?

 派閥とは、自民党の中にある、政治家たちの集まりのことを言います。「政策集団」と説明されることもありますが、「政策を一緒に考える集団というよりは、人のつながりで集まっています」と中北さんは話します。
 派閥に入ると、政治の経験が豊富な議員に助けてもらえたり、大臣や副大臣、党の役員などに推薦してもらえたりします。その代わり、メンバーは派閥のトップを総裁(自民党の党首)にしたり、力を強めたりするために活動することがあります。現在の自民党で総裁選挙に立候補するためには、党に所属する国会議員20人の推薦が必要ですが、多くの議員が自分が所属する派閥のトップを推薦しています。「政治家は孤独で、気をつかうことも多い仕事です。そのため派閥をつくって、お互いに助け合っています」と中北さんは言います。
 派閥には、それぞれ独自に事務所もあります。政治団体として国の役所の総務省に登録していて、支持者からお金を集める「政治資金パーティー」も定期的に開きます。

◇派閥はいつからあるの?

 派閥は、終戦から10年たった1955年、二つの保守政党が合流して「自由民主党」ができた時からすでに存在しています。派閥に最も勢いがあったのは、1980年代です。当時の衆議院議員選挙は今と違い、「中選挙区制」といって一つの選挙区から複数の議員を選ぶ仕組みでした。その場合、同じ選挙区に自民党から複数の人が立候補します。自民党の候補者同士でも戦わなければならず、「党の中の党」ともいえる派閥の助けが必要でした。

 また、以前は派閥のトップになることが、総裁、そして総理大臣になるためには必要だとされていました。「三角大福中」と呼ばれた、三木武夫さん、田中角栄さん、大平正芳さん、福田赳夫さん、中曽根康弘さんの5人は派閥を率いて総裁、総理大臣についています。夏は「氷代」、冬に「モチ代」としてそれぞれ数百万円のお金が派閥のメンバーに配られていたそうです。「政治資金の制度が改められ、派閥がつくる政治団体は企業などから資金を集めることが難しくなりました。今は派閥にいても、金銭的なメリットがあまりありません」と中北さんは話します。

◇今はどんな派閥があるの?

 現在自民党には、安倍派▽茂木派▽麻生派▽岸田派▽二階派▽森山派――の六つの派閥があり、安倍派が最も人数が多くなっています。派閥に入らない「無派閥」の議員もいます。前総理大臣の菅義偉さんもそうです。
 同じ政党なので、考え方が全く違うということはありませんが、総理大臣の岸田文雄さんの派閥「宏池会」は、党内で「リベラル」と言われています。憲法改正に消極的とされていて、「ハト派」などとも呼ばれます。これに対して元総理大臣の安倍晋三さんの派閥の「清和政策研究会」などは、改憲に積極的な「右派」や「タカ派」などとされています。
 近年は、森喜朗さんや小泉純一郎さん、安倍さんなど、今の安倍派に所属していた議員が総理大臣になっていました。岸田さんは、宏池会として1991年の宮沢喜一さん以来、30年ぶりに送り出した総理大臣です。

◇派閥の力は衰えているの?

 元総理大臣の田中角栄さんや竹下登さんが派閥のトップを務めていたころは、教育や建設など、さまざまな分野に通じた議員を集めてそれぞれの業界への人脈を広げました。「数は力」とばかりに、総裁選挙ではメンバーの人数が一番多い「最大派閥」の動きが勝敗を左右しました。
 しかし、そうした派閥を中心とした政治は、有権者から政策ではなくてお金で動く「金権政治」や「密室の政治」として批判を受けてきました。
 政治家たちは、国民の政治に対する不信感をなくそうと、政治資金の制度の見直しなど改革を進めました。その一つとして、選挙制度も、同じ党から基本的には1人しか当選できない「小選挙区制」に変わりました。小選挙区では、党から公認されれば、選挙活動のお金がもらえて応援も受けられます。結果的に派閥の力はあまり求められなくなりました。中北さんは「今、派閥の役割として仲間をつくる機能が一番大きいと思います。以前より力は衰えましたが、なくなることはなさそうです」と話しています。

◇派閥は自民党だけなの?

 自民党に対抗する野党にも、党内に政治家たちの集まりがありますが、同時に二つ以上のグループに入っている議員もいて、自民党の派閥ほど締めつけは強くないそうです。政治団体に登録しているグループも、あまりありません。
 長く政権与党を続けている自民党は、巨大な組織です。人数が多く一つにまとまるのが難しいので、派閥で活動してきた歴史があります。その中で、さまざまなルールが作られました。たとえば、派閥は同時に二つ以上入れません。石破茂さんの派閥「水月会」は自民党総裁選後の昨年12月、派閥ではなく、他の派閥に入っていても参加できる「グループ」として活動していくことを決めました。
 かつては「総裁候補」がいる集まりが派閥とされていましたが、今は必ずしもそうとは言えないようです。

(2022年02月16日掲載毎日小学生新聞より)