日本国憲法を味方にする【月刊Newsがわかる4月号】

「無名の左腕が快進撃」浦和実・石戸颯汰投手インタビュー

甲子園は新たなヒーローが誕生する舞台でもある。1年前は浦和実(埼玉)の石戸颯汰投手(18)がそんな存在だった。無名だった変則フォームの左腕は、120キロ台の速球とさらに遅い「魔球」を武器に、春夏通じて甲子園初出場のチームを4強まで導いた。1試合ごとに増す周囲の熱狂。「旋風」の中心で何を感じ、マウンドに立ったのか。 (取材/構成・角田直哉)

――右足を顔近くまで高く上げ、背中を丸めて一度沈み、上から投げ下ろす。個性的な投げ方が注目された。

 中学1年の終わりごろ、球に力が伝わりにくかったので、当時の指導者の方と一緒に試行錯誤を重ねて、上半身と下半身がうまく連動できたのがあの形です。
 浦和実でも、体の開き方など細かい部分を修正した程度で、ベースの部分は自分のやりやすい形を崩さずにやらせてもらえたことが、とても大きかったです。

――2025年春の選抜大会では初の甲子園にもかかわらず、冷静にひょうひょうとマウンドに立つ姿が印象的だった。

 球速は周りと比べても遅かったけれど、制球さえしっかりしていればある程度は大丈夫だろうという自信もありました。1回戦の滋賀学園戦で、先頭バッターに対して全てキャッチャーの構えたミット通りに球が行ったんですよね。あれが良かった。行けるかも、という気持ちになれました。

第97回選抜大会で力投する石戸投手=阪神甲子園球場で2025年3月28日

――1回戦は6安打完封。2回戦で東海大札幌(北海道)、準々決勝で聖光学院(福島)と勝ち上がっていくにつれて、注目度も一気に高まった。精神面での変化はなかったのか。

 SNS(交流サイト)などでの反響も大きくなり、注目されていることが分かりましたが、自分としては変わらず冷静でした。緊張もあまりしませんでした。ただ聖光学院戦、4-4のまま迎えた九回裏の守備は独特な雰囲気がありました。球場中の声援がすごくて、一人でもランナーを出したら一気に相手の攻撃にのみ込まれてしまう。あそこは緊張しましたね。それでも何とか3者凡退でしのぐことができました。
 延長タイブレークに入り、自分も仲間も「絶対勝てる」と確信がありました。その気持ちが直後の十回の8得点につながりました。あの雰囲気の中で、自分の投球を見失わずに普段通り投げ切れたことで成長できたと思います。

――準決勝で智弁和歌山に0-5で敗れた。この試合は8回12安打5失点(自責点は3)と我慢の投球となった。

 悔いが残るのは一回の投球です。先頭打者にポテンヒットで二塁まで進まれ、次打者への初球、死球を与えてしまいました。バントだったのですが、今思い返せばいつも通りに対応して1死三塁にさせるべきだったなと思います。結局はいきなりの2失点。最初の安打に動揺したわけではないですが、少しでも冷静さを欠いてしまうと、一気につけ込まれるんだなと、大きな反省点になりました。

――選抜大会後は左肘の状態が万全ではなく、苦しい時期を過ごした。最後の夏は埼玉大会の準決勝で敗れ、甲子園に戻るという目標はかなわなかった。

 センバツから戻って間もなく、左肘に違和感を覚えるようになりました。甲子園では登板間隔も短くなり、自分が思っている以上に疲労がたまっていたのだと思います。夏の大会は調整が難しかったですが、その中でも自分の可能な限りの投球はできました。
 高校3年生の1年間は、自分としては春のような投球の「再現性」を高めることを意識してきました。甲子園での投球は最大の上振れというか、どう考えても出来すぎでした。もう一度やって、と言われても多分無理です。だからあの時を「超える」のではなくて「根拠を持って、もう一度できるようにする」というのが、センバツ後の目標になりました。
 その目指すところは、この先大学(拓殖大に進学予定)に行っても、変わらないと思います。そのために今もフォームは微修正を重ねていて、右足の位置が少し下がりました。現状が一番、ということはないと思うので、常に最善の形は考え続けたいです。

――浦和実の快進撃は高校野球の魅力を改めて多方面に発信した。その旋風をど真ん中で体験し、今後の野球人生にどのようにつなげていくのか。

 甲子園はずっとテレビで見ているような場所だったけれど、実際に立ってみると画面だけでは分からない景色や音があって最高の舞台でした。自分は甲子園に出て、多くの人に自分の投球を知って
もらえて、人生が変わりました。
 大学でもまずは試合に出ること。そしてあの時のような、高いレベルで打たせて取る投球を何度でも「再現」できるようになって、また大観衆を沸かせたいと思います。

談笑する(左から)浦和実の田畑富弘部長、石戸投手、辻川正彦監督

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